メーカー時代の工場立ち上げ経験が財産に
東京食品機械 代表取締役社長 秦 哲志氏 (下)

       秦社長

 ――元々は技術系。
 秦 北海道の高等専門学校を卒業後、ハム・ソーメーカーに就職しました。32歳で東京食品機械に入社するまで、技術開発部門に所属していました。そのメーカーの東海地方にある工場が今後の成長のカギになると、いま注目を集めているのですが、私が入社して間もなく、その工場の新築プロジェクトメンバーの一員として参加することができました。30年ほど前のことです。

 ――立ち上げに参加した工場が、今では会社の主力となり、成長の原動力になっているのはうれしい。
 秦 当時アメリカのハム・ソー大手と技術提携しており、アメリカ式の商品を作ろうという目的で工場を建設しました。商品がアメリカ式なら、建物もアメリカ式。アメリカを意識した、とても頑丈な工場で、業界でも話題となりました。ここで誕生した商品は今でいうコンシューマーパックのハシリでもあります。
 この工場は、包装機1台入れるのに1カ月かかったというエピソードも。私は駆け出し間もない頃で、1年間にしっかり休んだのはほんの数日。とにかく現場で必死になって働いていましたね。若いうちにこうした経験ができたことは他に代えがたい財産となっています。

“北海道”“産地”がキーワード

 ――今後の展望は。
 秦 今まで深絞り包装を手掛けたことはないけど挑戦してみようか、という地方の加工場が増えています。こうした方たちにも新規に導入しやすい小型タイプの包装機を揃えているので、添加物を加えなくても日持ちさせられる、残渣を減らせるなどの機能性を加えた包装ができるということを、機械メーカーの立場から正しく説明し、お手伝いできればと思います。

 ――小型機の需要がさらに広がる。
 秦 北海道の事業にも力を入れていきたいですね。今までは北海道のような産地で包装機を提案する場は限られていたのですが、比較的小さな生産者でも自分たちで加工しようという動きがみられるようになりました。そうした方にも最新の機械を見ていただこうと、6月末に北海道支店にMULTIVAC「R145」を1台入れ、テスト運転に応じられるようにしました。これで北海道、仙台、我孫子(工場併設)、大阪、福岡の5つの支店すべてに「R145」、あるいは「R245」が入ったことになります。包装機を検討している地方のユーザーに、その場でデモができ、パックしたものを視覚的にも理解していただけると思います。
 また、機械の提案だけでなく、地方の生産者・加工場とお客さんを引き合わせるような役割を担うコーディネートができればと考えています。

 フードエンジニアリングタイムス(FEN)2013年7月10日号掲載