全自動脱骨ロボット、世界を席巻
前川製作所 次長 木下 茂樹氏（食品ブロック チキン部門 リーダー）
前川製作所のチキン骨付きもも肉全自動脱骨ロボット「トリダス」は全世界10カ国、650台もの納入実績を持つ。今後は胸肉を脱骨できる「イールダスＥＹＥ」の提案にも力点を置くという。“装置”ではなく“ロボット”と名付けるところに同社の自負がある。チキン部門の責任者木下次長にその思いを聞いた。
木下次長
――鶏肉の加工機械の販売状況は。
木下 この業界は良かったり悪かったりと波があるのですが、平均的には、安定した販売状況になっています。昨年は、ターンキーの大型プラントの立ち上げ、新規の開発商品を発表したり有意義な１年だったと思います。海外の仕事も多く受注し、充実していました。
――海外はどの国が対象？
木下 当社が直接仕事をしているのはブラジルやアメリカ、タイ、欧州などです。海外の食肉関連機器の展示会にも出展しており、２年前には隔年で開催しているブラジル・サンパウロ市の展示会「テクノ・カルネ」に出展、今年はアメリカ、メキシコの展示会にも出展しました。
――海外の反応は。
木下 「トリダス」をご存じない方は何をする機械？ と関心を寄せていただき、デモ運転を興味深く見てます。会場で実演すると大きな人の山ができます。海外では同じような仕事をする機械はあっても、「トリダス」のように１本、１本形が違う骨つきもも肉を正確に、精度よく脱骨できる機械はありません。
――歩留まりが高いのも、ユーザーに受け入れられている。
木下 実は歩留まりに関しては、初代のトリダスは人手に負けていました。第１号機は1994年に出荷、現在の「トリダス・マーク�供廚�2004年に誕生しました。現在のマーク�兇蓮⊃夕蠅汎嬰�以上との評価をいただいてます。
――初代とマーク�兇琉磴い蓮�
木下 制御システムをより“考える”ようにしたことと、機械そのものを維持管理しやすい構造に変えました。肉を切るという工程は骨に接します。骨の強度によっては多大なダメージを受けてしまいます。また、先代よりも洗浄しやすい構造としました。生肉を処理しているため、菌の繁殖を抑えなければなりません。
――「イールダス（チキン胸肉全自動脱骨ロボット）」については。
木下 トリダスはある程度実績を積んできましたが、イールダスはまだまだこれからが勝負だと思っています。イールダスが完成したのが2007年。当初は鳴かず飛ばずの日々が続きました。その後、機械の内部にカメラを設置して鶏のサイズを１羽１羽測定するようにしたこと、またそれに伴い機械に改造を加えたことで、評価を得るようになりました。
トリダスは骨の長さと関節の位置を測定するエンコーダー（長さを測るセンサー）を搭載し、イールダスには鶏の大きさを測定するカメラを搭載。両方とも正しく測定し、“相手をよく知る”ことをコンセプトに開発しています。
――相手をよく知ることが高い歩留まりとなって成果を出している。さて、今年のＦＯＯＭＡも近づいてきた。
木下 今年もトリダスを出展する予定ですが、今回は＋αの機能として特殊なカットも提案しようと考えています。鶏もも肉はヒトで言う腿部分をサイミート、脹脛部分をドラムミートといいますが、このサイミート市場に投入可能な＋αです。脚の上部だけを脱骨できる機能を訴求します。日本のユーザーには“こういう機能もできる”ということをアナウンスし、“ならばこんな機能はできないか”と新たな要望を聞き出していきたいですね。
――ＦＯＯＭＡの開催が楽しみだ。今後の展望は。
木下 今まではトリダスがメインでしたが、今後は、イールダスをメインに取りかかります。日本での稼働は24台、これをもっと増やしていきます。
トリダスは、右にでるものはないと信じています。また、イールダスもチキンの上半身をセットするだけで手羽付き胸肉、ささみ、胴ガラに分離でき、オプションで手羽を分離する（手羽元、手羽先）装置もあります。このような機械は世界でも他にありません。トリダスもイールダスも、当社が敢えて“装置”でなく、“ロボット”とネーミングしているのは、機械が鶏の状態を計測して、計算し、自分で判断してカットしているという自負があるからです。この自負を胸に、そこに甘んじることなく今後もよりよいものを開発していきたいと思います。