健全な企業体質でコロッケの価値を創り価値を売る
サンマルコ食品 社長 藤井幸一氏

   藤井幸一社長

 サンマルコ食品(札幌市)はコロッケの基幹工場である恵庭工場(恵庭市)を増設する。来年6月に着工し、19年10月に竣工する予定。2ラインを増設するとともに、包装ラインの省人化を図る。恵庭工場は現状で4ラインあり、コロッケを1日90万個生産している。

 ――増設の目的は?
 藤井 増設する2ラインの生産品目については、1ラインは今の延長線になるかもしれないが、それだけでは意味がない。コロッケが主体であることに変わりはないが、もう1ラインで何を作るかはこれから検討する。
 ――人手不足だ。省人化も進めると聞いた。
 藤井 1ライン当たり7〜8名が必要な包装工程のピッキング作業をロボットで自動化し、包装ラインの人員を半分に抑えることを目標にテストしている。
 ――昨年は台風の影響でコロッケの原料となるじゃがいもが不足したが。
 藤井 前3月期の売上高は102億円となり、前年実績に対して微増ながら増収増益を果たした。前期の馬鈴薯の使用量は前年比101%と増えている。契約農家と長年築いてきた関係があればこそだと感じている。
 ――羊蹄山麓の馬鈴薯は台風の影響をあまり受けなかったと言われているが。
 藤井 実際には羊蹄産も1割ダウンしている。幸い量は確保できたが、価格が高くなって新規の取引依頼があってもコスト的に合わず応えられないケースもあった。正確に言えば、特に契約以外のブローカーからの仕入れが難しく、馬鈴薯価格が従来の1.5倍、場合によっては2倍近くなるケースもあった。
 ――北海道以外から調達するわけには?
 藤井 顧客からもなぜ海外や他の地域から仕入れないのかと聞かれるが、当社は基本的に北海道以外の馬鈴薯を使わない。しっかりとトレースできる原料を使う。
 ――どうしても原料コストがかさむ。安価なコロッケを生産するメーカーもあるが。
 藤井 当社は安売りできる経営スタイルの企業ではない。もちろん、安売りをすれば5年くらいは売上げを伸ばすことができるだろう。しかし、その後は落ちていく。それよりも働き甲斐のある職場を作り、設備投資をしっかりと継続していかなくてはならない。それが社員のためになり、消費者のためにもなると信じている。
 ――平成18年に日本冷食を吸収し、一時的に売上げ100億円を突破した。
 藤井 当時は売上だけは100億を突破したが、内容が伴わなかった。そこで82億円まで売上げを圧縮し、経費の見直しや合理化を推進して再び健全な100億円をめざした。
 ――そうして一昨年に100億突破を果たし、2年連続で大台を超えるようになった。
 藤井 5年前には津別工場に新棟を建て、2年前には恵庭工場の第3期増設を行った。設備投資ができる企業体質でなければ健全とは言えない。
 ――老朽化していた東京支店を新築移転し、11月13日から業務を開始している。
 藤井 新東京支店は6階建て。1〜4階が事務所で、4階にセントラルキッチンを設けた。このセントラルキッチンでは今年4月にオープンした東京銀座の商業施設「GINZASIX」に出店している惣菜販売の直営店「TAKAZAWA180ICHIHACHIMARU」で販売している商品の下ごしらえを行っている。
 ――同店では1個300円近いコロッケや、パン粉を使わないベイクドコロッケなど、超高付加価値の商品を販売している。
 藤井 同店のメニュー開発で培ったノウハウを当社の開発にフィードバックでき、ブランド価値の向上も期待できる。当社は札幌の再開発地区にある「ICHIHACHIMARUサンマルコキッチン新さっぽろカテプリ店」、「同イオン札幌麻生店」など札幌市内に直営4店舗を展開しているが、売っている商品は一律ではなく、それぞれで求められる価値に合う商品を提供している。
 ――コロッケの価値を訴え続ける。
 藤井 もやしや玉子のように安売りの対象にされてはいけないと、以前から工夫を加えることで価値を訴求してきた。17〜18年前に発売して一時期3〜4億円商品に育ったチーズフォンデュコロッケもそのひとつ。昔は百貨店向けやスーパー向けの分類だったが今はスーパーでも店によって違う商品、異なる価値が求められている。銀座で販売しているベイクドコロッケも、実は札幌三越店でテスト販売した商品。手間がかかるが、付加価値を高めることが重要だ。
 ――今期の業績は?
 藤井 4〜9月の売上げは前年同期を若干下回り推移した。原料高騰による製品値上げなどの影響が出ている。通期の目標は105億円だが、今は前年実績を確保しようと社内的に確認している。最低でも100億円台は維持したい。売上げについては無理をしないが、これは社内的なモチベーションの問題。