ITを活用した提案力を強化、基幹システムを刷新
三井食品 代表取締役社長 長尾 光男氏

 三井食品の代表取締役社長に6月20日付で就任した長原光男氏は、今期以降の方針について「成長を実現できる体制の構築をめざす」と語る。環境変化への適切な対応などを支える基盤は「IT」と見極め、今年から3年間をかけて大きな投資を行なうとしている。

     長尾社長

 ――東日本大震災により、有事の際のライフライン機能として、卸の役割がクローズアップされた。
 長原 果たすべき社会的責任の大きさを改めて痛感しました。当社は幸いにもITの心臓部である基幹システムを東京と大阪に分散し、仮に東京がダウンしても大阪に切り替えて事業継続する体制をとっていたため、システム停止といった状態に陥ることはありませんでした。しかし、倉庫オペレーションの混乱を余儀なくされ、関係者にご迷惑をかけたこともありました。こうした経験を良く分析し、ライフラインを守るという使命を果たすためにやるべきことを、取引先と共にしっかりと考えていきたいと思います。

 ――喫緊のテーマは。
 長原 節電対応です。企業の対応はもとより、消費者の生活スタイルにまで様々な影響を及ぼすことが想定されます。しかし、これは消費の縮小ではなく、新たな需要創出のチャンスと捉えています。当社の機能を最大限に生かし、知恵を絞ってこの難局をひとつずつクリアしていくことで、取引先に信頼される卸をめざします。

 ――環境変化への適切な対応、ライフラインとしての役割といった卸機能を支える基盤は。
 長原 やはりITです。ITの拡充を図ることは不可欠と考えます。そのため、今年から3年間をかけて大きな投資を行ない、基幹システムを刷新します。これまでもマイナーチェンジによるチューニングは行なってきましたが、ここでしっかりと長期的視点に立ちシステムを見直すことにしました。社内では「次世代システム委員会」を設置し、システムのあり方について議論を尽くしながら進めていきます。次世代システムの青写真としては、厳格な米国SOX法(米国企業改革法)対応で培った堅牢性は維持しながら、ローコストで効率的なロジスティクス機能、精密な情報分析からナレッジデータベース化までをトータルに行ない、効果的な営業提案にまでつなげられるようなシステムの構築を計画しています。

 ――今期は梅澤、日本ペネットとの統合効果で売上高は6000億円を超えると想定される。
 長原 単に規模を拡大するというだけでなく、営業の原点にも忠実に取り組みたいと考えています。ひとりひとりの営業がお客様に対して想像力のある人材となり、その人材が当社の新しい社風、組織を作るようにしたい。営業力の強化を今期も重点課題として掲げ、営業のスキルアップに努め、現場力をアップし、1対1の強さを醸成していきます。そのため、国内外での営業研修にこれまで以上に注力し、ITを活用した提案力を強化し、情報力と想像力のある人材を育成していきます。

 (ながはら・みつお)1951年(昭和26年)8月生まれ、59歳。三井物産に76年4月入社、名古屋支店鉄鋼部に配属。米国三井物産ニューヨーク本店、本店鉄鋼製品本部本部長補佐などを経て、2007年に中国支社長、08年理事中国支社長、今年4月1日付で三井食品取締役となった。東京都出身、慶大経済学部卒。