日本で培った技術を海外展開の糧に
 現地事情を考えたモノづくりがこれからの姿
大森機械工業 代表取締役社長 大森 利夫氏

 大森機械工業は自社が持つ各機能の充実を図り、グローバル戦略を推進し、社員にはより働きやすい会社づくりを目指している。それこそが、売上げ目標を毎年クリアする原動力となっている。新拠点「さくら工房」も順調稼働。日本包装機械工業会の会長を務める大森利夫社長に、業界の今後も含めて語ってもらった。

          大森社長

 ――2015年を振り返って。
 大森 第3次3カ年計画(14年6月〜17年5月)を進行中。第1次で掲げた売上げ目標の150億円、2次の200億円はともに達成しており、この3次でも達成できるよう社員一丸となって取り組んでいます。

 ――着実に業績を伸ばしている。
 大森 当社単独で200億円を突破しました。この200億円というのは中小企業にとって一つの目標であり、大きな数字です。これを達成できたのも、12年12月に竣工した新拠点「さくら工房」の役割が非常に大きいです。本社工場は受注機の大型化に伴い、組立スペースの不足が常態化していましたが、新工場により、そうした問題が解消。スペース不足で今まで応じられなかった案件でも対応でき、かなりの台数を出荷できるようになりました。竣工当初はまだ余力を残していましたが、今ではフル稼働になっています。

 ――進行中の第3次3カ年計画のテーマは?
 大森 “会社力UP”、“グローバル”、“働きやすさ”。特に2015年は海外展開が活発な年でした。6月にタイに現地法人を設立、オランダでは代理店Selo社をグループ化、9月にはインド子会社である“大森インド”の全株式を取得し、完全子会社としました。海外拠点は当社にとって財産。この1年で築いた海外展開の礎を、今年(2016年)はグローバルシナジーをうまく発揮しながら、結果を残していきたいですね。

 ――本社に体力がなければ、海外展開が広がらない。
 大森 その意味でも、1次と2次の3カ年計画で足場を固めてきました。目標だった200億円の達成により、会社的な信用も以前より増しているはずです。テーマの1つでもある“会社力UP”につながります。1次と2次で築いた信用を、この3次で発揮させなければなりません。

 ――海外展開で留意しているところは?
 大森 国が違えば、文化も法律も違う――。異なった環境での仕事は正直大変です。しかし、それも初めから織り込み済みで、それを考慮して海外で勝負に出ています。今まで日本で培ってきた技術に当社は自信を持っており、確固としたものがあります。この技術を信じて突き進んでいきます。

 ――技術は嘘をつかない。
 大森 その通りですね。輸出すればいいわけではありません。進出した地域でのローカライゼーション。それを実行するならば、中途半端ではない、しっかりとした工場にしなければなりません。そうした工場で機械を作って、販売し、メンテナンスを充実させる。日本から持っていく、あるいは代理店による対応だけでは限界があります。
 日本仕様を海外市場に押し付けてはダメ。“郷に入っては郷に従え”で、現地の事情を考慮したモノづくりの姿勢が問われるでしょう。それが“技術立国・日本”のこれからの姿なのではないでしょうか。

社員がやりがいを持って働ける会社づくりへ

 ――このほど、日本政策投資銀行の「DBJ健康経営格付」を2年連続で取得した。
 大森 “従業員の健康配慮への取り組みが優れている”との格付を昨年に引き続き取得しました。埼玉県の企業では取得第1号。これは日本政策投資銀行(DBJ)が従業員の健康配慮への取り組みに優れた企業を、100を超える項目から評価選定し、その評価に応じて融資条件を設定する制度。3カ年計画の基本方針のひとつとして、新たに「働きやすさUP」を掲げ、その一環として“社員の健康=会社の健全な経営力”を標榜、健康経営に取り組んでいます。

 ――社員は会社にとって、かけがえのない財産だ。
 大森 お客様にご満足いただける製品を開発、販売するだけでなく、社員の健康面やワークライフバランスの充実に着目し、その両立を図ることで、真の優良企業となることを目指しています。今年度は、昨年度までの取り組みに加え、“大森健康塾”、“有休カウント10”といった新たな取り組みをスタートし、健康経営を一段と前進させる取り組みを行なってきました。

ジャパンパック、3つの目標達成

 ――大森社長は一般社団法人日本包装機械工業会の会長も務めている。
 大森 この1年、包装機械全体の出荷高は堅調。最終的な数値ではありませんが、2015年度(15年4月〜16年3月)の包装機械の生産金額は4100億円を越える見込みで、前年に比べて3%近く増加すると見ています。入れ替え需要が増えたほか、新規の案件では、ユーザーによる経営統合などにより、まとめて機械を購入するという動きもありました。14年4月からスタートした投資減税を有効に活用しているお客様も少なくありません。

 ――工業会の2015年のトピックスは?
 大森 10月に開催した工業会最大のイベント“ジャパンパック”を開催したことでしょう。出品者数、総小間数、来場者数の3つとも前回比増の目標を掲げましたが、どれもクリア。出品者は400社を超え、来場者数も10万人を超えるなど大変盛り上がりました。
 事務局10数名、実行委員30名ほどと限られた人数で、あれほどの大きな展示会を運営し、しかも日頃の会社活動と並行しながら準備を進めてきました。関わったすべての人たちに感謝しています。また、参画意識の高いのも工業会、包装機械メーカーの自慢できるところ。それぞれの出展社がセミナーやイベントなどに協力し、展示会全体を盛り上げていただきました。

 ――工業会と、御社の2016年の抱負を。
 大森 工業会は共益団体として、参加している会員各社に利益が出るよう活動していかなければなりません。IT委員会やセミナー委員会など委員会活動を活発にし、情報の共有と発信を前年以上に充実させます。また、一般の方向けにもセミナーを開き、包装機械を始め、包装そのものへの理解を求める活動を実施します。
 当社としては、第3次3カ年計画の仕上げの年に入ります。掲げた3つのテーマの達成に向けて着実に歩み、お客様、社員はもとより、すべての皆様からの期待を裏切らない会社づくりにまい進していきます。

 フードエンジニアリングタイムス(FEN)2016年1月6日号掲載