クロマグロの養殖技術の向上につながるDNAチップの開発に水産総合研究センターが成功した。このチップにより、クロマグロの全遺伝子の解析が可能。クロマグロの生命現象を迅速に解析でき、将来的には早期産卵技術、優れた配合飼料、ワクチンなどの開発につなげることなどが期待できる。
太平洋クロマグロ資源の減少に伴い、人工種苗による安定的な養殖生産が期待されている。そのためには親魚の産卵制御、生残率の向上、ウイルス感染症対策、共食いや衝突死の防止などが課題。生物の活動は、遺伝子の情報からたん白質が作られることで制御されるので「これらの多くの課題を効率よく解決するため、遺伝子に着目し、これらの問題に関連する遺伝子が、いつ、どこで、どのように働くかを調べる手法が有効」(水研センター)とされていた。
研究グループは既にクロマグロ全遺伝情報から2万6000個以上の遺伝子の存在を予測しており、これをもとに、全ての遺伝子の働きが分かるように、各遺伝子の遺伝情報であるDNAをスライドグラス上に高密度に張り付けたDNAチップを開発した。
クロマグロ組織や細胞から採った遺伝子の転写産物が、このチップ上のどの遺伝子のDNAとどれだけ結合したかを調べることで、その組織でも各遺伝子の発現動態が分かり、成熟、仔稚魚の発生過程、栄養要求、生体防御などに関わる遺伝子の働きを推定できる。
記者会見する加藤雅也氏(右端)ら研究グループ