３Ｒ活動推進、スタッフ全員が主役
森永乳業 東京多摩工場��
森永乳業の東京多摩工場は循環型社会形成推進功労者として、環境大臣表彰を昨年受けた。かねてから取り組んでいる産廃の削減、再資源化、ゼロエミッションの推進など３Ｒ活動が評価された。木原吉一工場長は「１年や２年でやってきたわけではありません。環境や地域住民の方にいかに優しい工場であるかを追求した活動を長く積み重ねてきたことが評価されました」と語る。
木原工場長
――立地は工場地区というわけではなく、周囲は住宅が目立つ。
木原 工場が建った1966年当時は、建物は東京多摩工場だけ。周囲は狭山茶の畑でした。その後、開発が進んで住宅が増えており、昨年11月にはすぐ隣接して高層マンションが建ちました。消費者の視線があり、緊張感を持って仕事をしていますが、それがプラスになっています。常に周りからみられている、どこを見られても恥ずかしくないようスタッフ一人ひとりが行動しています。
牛乳やジュースなどの飲料とヨーグルト製品を製造する市乳工場である東京多摩工場。隣接する粉乳製品を製造する大和工場、村山工場とともに「多摩サイト」と呼ばれ、同社の主力工場の一つ。見学工場として年間１万5000名の消費者を受け入れている。その際、使用済みの牛乳パックを用いた紙漉き講習会を実施するなど、環境保全活動のＰＲと啓発活動を推進している。
――2000年、乳製品による集団食中毒が起きるなど、食品業界が深刻な事態に陥った。
木原 緊張感が走りました。業界全体に影響が及び、ノーマルなものにも敏感になりかねない事態でした。しかし、お客様の多くのご意見に対し、設備対応や品質を向上させる衛生管理対応など真摯な姿勢で向き合ってきました。多額の投資を必要とすることもあり苦しい部分も正直ありましたが、安全や安心面、おいしさでは自信を持って製品を製造しています。
――ピンチをチャンスに変えた。
木原 それ以来、毎年１月に会長が全国の工場を見て回り指導しています。生産現場に会社のトップが気を配ることは工場管理者として、ありがたいことです。生産現場は「森永」というブランドを支える土台であり、結果的に消費者に安心・安全なものを届けることになります。
―― １日330万個の製品を作っている基幹工場だが。
木原 毎日600ｔから700ｔを生産、夏場の多い時は1000ｔもの量を生産しています。日本国内でもこれだけの規模の工場はそうはないと思います。「日本のどこかで誰かが毎日食べていただいているんだ」とスタッフは自分の仕事に誇りをもっています。その自負と責任が良い結果となって工場は動いています。
コージェネレーション設備
乳業工場は「水」と多く関わる。使い終わった排水をきれいにして自然に還すために、排水処理設備を完備している。「活性汚泥処理」を採用、「活性汚泥」と呼ばれる微生物が、排水の汚れである栄養成分を食べ、これを水と二酸化炭素に分解することによって汚れを取り除く。微生物には酸素が必要なため、排水処理槽では空気を送り込むエアレーションを行なっている。
――グループの全国の工場に設備を設置しているが、多摩工場はろ過処理設備を導入するなどこれほど大規模な排水処理設備は珍しい。その姿に圧倒させられる。
木原 排水基準に適合した水は近くを流れる「空堀川」に放流しています。この川の水は新座から荒川を経由して、隅田川に。最終的に東京湾に流れています。東京湾に流れるため排水基準は大変厳しいのですが、クリアしています。川の水が不足したときは地域住民の方から「もっと多く流して」と言われることさえあります。魚も元気に泳いでいます。
排水処理施設、これほどの規模のものは珍しい
――表彰されたことで、スタッフの士気もさらに上がるのでは？
木原 収集しなさい、分別しなさい、などむやみに言うだけでは意味がありません。コーヒーかすは活性炭になり、カイロに生まれ変わる。また、発電所のバイオ燃料にもなるというように自分たちが携わったものが最終的にどうなるかを理解してもらうことが大切です。必ずどこかで活かされています。この取り組みを今後も継続し、地域とともに歩んでいきたいと思います。原動力はスタッフ一人ひとりにあるのですから。
東京多摩工場の外観