食品工場のカビ処理に特許技術生かす
「無理だと思っていた」現場から驚きの声
(株)ピュアソン 代表取締役会長・CEO 浦辺修一氏
浦辺会長・CEO
洗剤、除菌剤の専門メーカー(株)ピュアソン（東京都豊島区）はカビの深部まで浸透して分解除去する、農薬成分を使わないカビ処理技術「カビ処理革命」を開発し、昨秋から本格的に発売を開始したところ、大手食品メーカーやスーパーから問い合わせが相次いでいる。実際にその処理能力の高さを見せつけられた現場からは一様に驚きの声があがっている。創業者の浦辺修一会長・CEOに新事業の今期の見通しと将来展望を聞いた。
――新技術の発表会見を昨秋開いた後の手ごたえは。
浦辺 おかげさまでハムソーや調味料、パンなどの大手食品メーカーや食品スーパーから問い合わせを多くいただいています。「効果を確認してから実際にどこを施工するか相談したい」と言われるため、最初にテスト施工していますが、すべて受注に結び付いています。
カビ時（梅雨時）までに施工を済ませておくには１〜２カ月前からテスト施工をする必要があるため、今は病院やホテルなどからも問い合わせが増えています。
――これまでの施工実績は。
浦辺 もともとは紀文食品からご相談いただいたことで研究開発をスタートし、2016年に商品化技術を確立しました。そこから数えると70社以上になります。昨秋の発表会見が当初予定より2カ月ずれこんだことで販売代理店網の構築が遅れていますが、単体事業としての初年度（2017年７月〜2018年６月）の売上高目標には届きそうです。
――施工先の業種業態の割合は。
浦辺 食品スーパーが６割、食品工場が３割、病院・ホテルが１割。意外なところでは、５年ほど前からフジサンケイグループの(株)エフシージー総合研究所（東京都江東区、小櫃眞佐己社長）と共同研究開発を続けている縁で紹介された美術館のほか、大手都市銀行やグアムのリゾート施設なども手がけました。
――食品工場や売場では主にどういった場所にカビが発生しやすいのか。
浦辺 カビが繁殖しやすい環境条件は３つあります。�ー湘戮�60％以上、��温度が25℃前後、�１浜槓�があること。湿度が高いほどカビにとっては快適な環境になります。基本的には温度差による結露が原因となります。
そのためカビが発生しやすいのは天井や壁、次いで冷凍冷蔵庫など設備機器の下側。床一面に発生する場合もあります。
――カビ対策に悩んでいる企業は多い。
浦辺 しつこいカビはなかなか取り除けない上、いったん除去できても短期間で再発生するため、対策のしようがないと多くはあきらめてしまう。そこで我々の出番となりますが、最初は聞いたこともない会社だから大丈夫かと思われる。
だが、試しに施工してみると効果が目に見えて表れる。除去するだけでなく、防カビ効果も維持する。「絶対無理だと思っていたのに」、「ここまできれいなるなんて」。施工先でそんな声をいただきます。
14カ月ほど前、大手ハムソー工場のカラー鋼板でテスト施工した際、同時に工場の従業員が市販の漂白剤を使って一部を掃除したことがありました。見た目はどちらもきれい。「この後の状況を比較して判断したい」ということになった。ところが先日、電話をしたら明らかに差が出てきたということでした。カラー鋼板なので結果が出るまでもう少し時間がかかりますが、正式受注に至ると思います。
食品スーパーの冷蔵品売
場 施工前
同 施工後
カビを根っこまで分解除去
――どのような薬剤を使用するのか。
浦辺 「カビ処理革命」には当社の特許技術が生かされています。使用する薬剤は全部で４種類。�ー＾￣�素酸ナトリウムをジェル化した強力で速攻タイプの除菌剤「ストロングジェル」は、市販の漂白剤の2.5倍の殺菌力を持ちながら、塩素ガスの発生量が極めて少なく低塩素臭であり、液だれもしない。
�⇒稽ケ�素系カビ分解剤「ブレイカー」は、低濃度の次亜塩素酸を使用しているが、通常の漂白系塩素剤と比較しても50〜80分の１の濃度で同等以上の殺菌効果を発揮する。
�７觜膠�素系浸透剤「インベーダー」は、壁面や目地の奥に入り込んだカビの菌糸にじっくりと浸透して不活化し、カビ分解剤「ブレイカー」の剥離・分解能力を高める。
�で戚�不使用の防カビ・抗菌剤「ストッパー」は人体に安全で環境にも無害ながら、カビを不活化してカビの胞子から菌糸を発育させない、胞子を生ませない。
これらの薬剤を施工面に交互に散布することでカビの根（深部）を分解除去することができます。
――従来の防カビ塗装との違いは。
浦辺 防カビ塗料は薄い塗膜一枚でカビを抑えている状態。施工面の内部では除去しきれなかったカビが繁殖して縦横無尽に広がっています。当社はカビの根っこにまで奥深く浸透して作用する薬剤を開発した。この点が他社と大きく違うところです。
また、防カビ塗装やボードの張り替えは足場を組む必要があるため、コストや営業時間の問題があるが、当社は足場を組む必要がなく、施工は噴霧やローラー塗布で十分。短期間、低コストで施工できるうえ、簡単なメンテナンスで効果も持続します。
――メーカーは工場を複数持つ。効果が認められれば企業内で一気に広がるのでは。
浦辺 ある食品メーカーの場合、テスト施工で好結果が出てから本施工まで１年かかったんですが、その後、隣の工場でも施工したいという話があり、今年３月に1600�峙�模で施工することになりました。すると今度は今年６月にも別の工場で施工することが決まりました。
予算の関係があるため、一気に広がることはありませんが、このように施工事例が一度出れば続けて依頼されることは少なくありません。
――来期以降の事業計画は。
浦辺 事業開始から２年間は食品工場とスーパーを中心に施工実績を積み上げ、販売店、施工代理店の開拓にも取り組む。
また、現在は１現場あたり３人以上を充てているため、施工面積に関わらず100�嵎�の基本料金を設定している。そうなると飲食店など狭いところではコスト高になってしまう。そういう狭い現場なら１人で対応できるよう新たな価格プランを考えたい。
売上高は今期8600万円、来期は２億円を目標にかかげています。
惣菜工場の天井ボード
施工前
同 施工後
食品添加物次亜塩素酸ナトリウム液の製造工場建設
――もともとはケミカルメーカー。OEM生産を得意としている。
浦辺 当社はディノスへのOEM供給で成長しました。千数百以上のアイテムとファンケル、ベネッセ、JR東日本、資生堂などを得意先に持っています。ジュピターショップチャンネルなどのテレビ通販にも力を入れており、100万本以上売った商品もあります。
次亜塩素酸ナトリウム液は、近頃大手電機メーカーがCMで盛んにPRしていますが、当社は20年以上前から研究開発に取り組んですでに商品化しています。殺菌能力が高い上に安全で、食品添加物殺菌剤として認められていることから食品工場や飲食店、医療・介護施設などで広く採用されています。
受注増に対応するため、群馬県太田市に初めて自前の食品添加物製造工場を建設しました。今年３月から稼働させます。
今後も世の中に必要とされる製品や役立つ技術を開発していきたいと考えています。