食肉加工機械メーカーの日本キャリア工業はプロセスセンター向けのスライサーの販売が好調に推移している。メンテナンス活動を拡充するため、人材の採用と育成に力点を置いている。年明けには大阪に事務所を開設する。
三谷専務
――今年開発した新機種は。
三谷 当社の主力であるフレーカーミキサーグラインダーに新たな機能を加えました。これはブロック肉をひき肉にする装置。ブロック肉を搬送するリフターや、グラインダーにかけるのに適したフレーク状のサイズに切削するフレーカー、ひき肉にするグラインダー、さらにミキサーを一体化しており、最小のスペースで作業が出来ることが利点の一つです。工程が最短距離で完了でき、肉質を傷めず、清掃作業も簡単なので、多くのユーザーに利用していただいています。
――どのような機能を加えた?
三谷 新型機は従来機と比べフレーカー部にプッシャー(エアシリンダ駆動)を追加することで、原料を最後まで効率よく切削でき、原料が躍ることなく静かに運転できます。グラインダー部のシリンダーヘッドには「外ネジ式プレート」を採用しました。外ネジ式プレート〜プレートの外形にネジを切って直接シリンダーに固定する方式で、当社の独自の技術として特許を取得しています。
――これによるユーザーの利点は。
三谷 シリンダーに直接固定するためプレートの「遊び」が少なく、プレートとナイフの異常摩滅や欠けなどのトラブルを減らすことができます。プレートの廻り止めキーが不要となるので、この部分の損耗によるトラブルもなくなります。さらに、プレートを固定するワッパとディスタンスリング、プレートの廻り止めキーも不要となり、部品管理や着脱時の作業が楽になります。
――現場にとってはありがたい機能だ。
三谷 見た目の変化は地味ですが、意義のある機能だと思います。異物混入はユーザーが一番神経をとがらしているところ。今年6月開催のFOOMAで参考出品しましたが、多くの食肉加工メーカーの方に関心を持っていただきました。外観だけでなく、機能面で訴えることができ、当社のオリジナリティを発揮することができたと自負しています。今後開発するグラインダーのすべてに標準搭載していきます。
――スライサーも好調だ。
三谷 主力のスライサー「マルハレス」シリーズは発売開始から10年が経過し、出荷台数は累計で400台となりました。しかし、一方でユーザーの中には機能を十分に活用していなかったり、手入れやメンテナンスなどで不安をお持ちの方もいるかもしれません。そこで、今年は無償で簡易点検をするキャンペーンで、全国を巡回しようと動き出しました。
――巡回1年目。その成果は。
三谷 まだ始めたばかりですが、巡回して正解でした。今までは代理店を通した販売が8割以上あり、導入後のユーザーの声を直接聞き出すことはなかなかできませんでした。講習会を定期的に開き、メンテナンスのやり方などを代理店に指導しているのですが、当社がめざすところまでを代理店がカバーできないことは多々あります。ユーザーには機械を正しく使用していただき、正しく評価していただきたい。ユーザーからも当社の直接のメンテナンスに新たな発見を見出すことができたと大変喜んでいただきました。
――今後の展望は。
三谷 新機種の開発はもちろん、引き続きメンテナンス活動に重点を置きます。そのためには人材が必要です。東京営業所を昨年開設し、当初は2名で活動していましたが、今年10月から3名体制になりました。今後も増やしていかなければならないでしょう。年明け早々には、大阪にも事務所を構えます。人による説明なきところに機械の本領は発揮できません。人材の育成を強化します。