野菜の評価基準、独自に開発
東京デリカフーズ 東京FSセンター(2)

 東京デリカフーズの東京FSセンターは野菜の分析やデータ管理を行なう研究室や、受発注システム、ユーザーを迎えて「野菜塾」などのセミナーを開催する部屋を設けている。加工だけではなく情報を発信するための拠点となっている。

野菜に関する豊富なデータが同社の強み

 取り扱う野菜の9割以上が国産で、そのうちの6〜7割は契約産地から調達している。50〜60団体にも及ぶ全国の農産者、農業法人からなる産地との契約取引により、年間を通じた原料の調達を行なっている。全量を同社に仕向けている生産者や、その取引金額が2億円以上にのぼる生産者もあるという。
 同社が野菜の取り扱いを拡大してきたことの裏付けには、長年にわたって野菜の様々な機能を定量的に分析してきたノウハウとデータの蓄積がある。
 同社のグループで研究開発を行なうデザイナーフーズは、形や色などの外観だけでなく中身に基づいた野菜評価を実施するため、10数年間にわたって野菜の機能評価を行なってきた。野菜の健康機能評価に重点を置いて進めた結果、各種国産野菜の抗酸化力などは数万検体の分析データを保有している。
 このデータベースを駆使することで、国内外の産地が生産した野菜を季節ごとの国産野菜と比較し、おいしさや栄養価、健康機能、安全性に優れているかどうかを数値として「見える化」できるようにした。

生産者と情報共有、包装の簡略化も

 「データベースの構築や数値として“見える化”することで、旬の野菜がおいしくて健康にも良いことを科学的に示すことができるようになった。また、同じ旬でも、土づくりや栽培方法など圃場・産地によって中身が異なりこともわかってきた」(同社)という。
 この実績を活かし、野菜の中身を中心に19項目を対象とした新たな評価基準「デリカスコア」を独自に構築。単なる野菜取引基準でなく、サプライチェーン全体の目線合わせの物差しとして、あるいは多様化する野菜ニーズを評価するツールとして、主要契約産地に導入して情報を共有した。
 このような活動を通じ、同社は得意とする国産野菜を商機に求め、事業を拡大してきた。以前は市場を中心に調達していたが、徐々に契約産地を増やすことで、野菜を必要とするユーザーの要望を直接産地に反映することができるようになった。仕入れコストの削減にも成功している。
 生産者を東京FSセンターに招き、現場説明会を開催。自分たちも頻繁に産地に赴いて生産者との交流を積極的に図り、お互いの立場の理解に努めている。
 「このような活動は、生産者にとっては様々なユーザーのニーズを直接感じる機会となり、一方、私たちも産地の状況把握に役立っている」という。
 「お互いの立場の理解を通じて信頼関係が深まってくると、例えば、ケース単位から重量単位に取引が変更できる、あるいは包装を簡略化できる、など契約に新しいアイデアや仕組みが組み込まれていく」と取引形態の進化に手応えを感じている。