阿部万寿雄の「食の安全」と「ものつくり」 −13−
HACCP認定工場への挑戦(2)

 企業診断を行ない、問題点を指摘した。これらを改善するため、認定取得プロジェクトチームを発足させた。
 活動期間約1年(月1回)。午前中は研修、午後は現場で問題を指摘し、実践教育を行ない、研修の成果を現場で生かす活動を繰り返し実施した。この活動を通し、会社幹部、品質管理担当者と現場従業員の理解を深めていった。
 この研修では、原則として大幅な設備投資は行なわないことととした。しかし、研修を重ねている間に、会長と社長に最小限の設備改善と必要人材の要求をし、予算枠を超えて迅速な対応を実施していただいた。

 プロジェクトチームを中心とする活動は以下のようなものだった。
 (1)取締役を品質担当者に選定し、チームの責任者とする。これによりチームの活動に核ができ、現場への実践徹底がスムーズになる。
 (2)専任の品質管理者として農大の新卒者2名(4大・短大)を採用し、教育訓練を開始する。彼らは大学で基礎を学んでいたこともあり、吸収が早く、行動力もある。即戦力に育ってきた。
 (3)会長の大英断で細菌検査室を新設、その後急速に現場環境、製品の品質向上に効果を発揮した。
 (4)従業員を教育訓練するため、全従業員を対象に食品安全衛生の講習会を開催し、現場での衛生管理の徹底を図った。従業員の服装、帽子の着用、手洗いの改善などにその成果が出始めた。

佃煮製造に使う設備
この改善では設備更新は最小限にとどめた

  活動を進めていく中で特に頭を悩ませたのが外部との遮断だった。人・物の出入り口の完全遮断に知恵を絞った。
 人の出入口は正面玄関に限定し、事務所も含めて全員の下駄箱を設置。ここで外履きから内履きに取り換え、外部からの土・砂などの汚染(土壌細菌)を防止した。
 また、従来の水産加工工場は大量の原料を搬入するため、外部と原料受け入れ室の床のレベルに段差を付けてない。そのため外部からの虫・土の進入には無防衛であった。
 その問題点を改善するため、原料搬入口は既存の扉に加えて2重のビニールカーテンで区切り、台車用の洗浄マットを敷いた。(次号へ続く)