業務用卸の挑戦、急速凍結機を起点に新ビジネス始動

 1911年(明治44年)創業の老舗食品卸、アクト中食(広島市、平岩由紀雄社長)は業務用卸としては異例の液体急速凍結機「ACT−H−01」を昨年開発し、コロナ禍に苦しむ外食店の復活支援に乗り出している。

 堀切一郎常務取締役は「コロナ禍の影響で食材の仕入れ予測が困難になった飲食店は多い。取引先からは食材を急速凍結して保管し、来店に合わせて解凍調理したいという要望や、冷凍自動販売機『ど冷えもん』を活用し、店舗のメニューを冷凍食品にして売り出したいという相談が寄せられた。そこで小型の凍結機を開発した」と語る。

 刺身やステーキ、天ぷら、ラーメン、サンドイッチ、スイーツなどあらゆる食品を高品質に凍結する。冷却能力は−40℃〜0℃で、凍結スピードは従来のエアブラストに比べて20倍速い。冷凍品質を左右する最大氷結晶生成温度帯を素早く通過させて、食材内部の氷結晶を極小化するため、解凍時のドリップ流出を抑える効果がある。

 アクト中食は業務用卸の強みを活かし、食材供給から店舗開業、商品開発、流通、販路開拓まで手厚く支援する。鮮魚・精肉加工や惣菜、タレ・ソースなどの協力工場は全国に約70カ所あり、OEM製造の相談にも応じる。こうしたワンストップソリューションを武器に急速凍結機の導入先を全国に広げている。

      小型の急速凍結機、生しらす(写真左)も高品質に急速冷凍できる

高齢者施設の冷凍需要を掘り起こし

 液体急速凍結機に続き、エアブラスト方式の急速冷凍機を使ったベンチャー企業との協同事業もこのほどスタートした。−60℃の超低温凍結が可能。コンベア式とバッチ式を用意し、食品工場向けに提案している。高齢者施設などに食事を提供する惣菜メーカーとも商談を進めているという。

 施設は人手不足で完全調理品のニーズが高まっており、市場に参入するメーカーは今後増えるとみられる。そこで、アクト中食が冷凍機と食材供給をセットで請け負う。

 堀切常務は「冷凍機を使えば、まぐろの刺身やいくら丼なども利用者に高鮮度で提供できる。高齢者は菌に対する抵抗力が弱い。冷凍であれば安全性を担保できる」と強調する。

 このビジネスモデルをコンビニチェーンと組んで展開するほか、沖縄県内ではセントラルキッチンに冷凍機を導入し、施設に食事を供給する計画を進めている。堀切常務は全国に広げたいと意気込む。

       昨年は展示会に積極的に出展し、液体急速凍結機をアピールした