再エネ調達の切り札になるか
初期投資不要の太陽光発電「ＰＰＡモデル」
今年に入って脱炭素化に向けた企業の取り組みが国内でも加速し始めたが、日本は再生可能エネルギーの供給量が不足しており、調達コストが割高という課題を抱える。そうした中、太陽光発電の自家消費型「ＰＰＡモデル」が再エネ調達の切り札として注目を集めている。
太陽電池モジュールで国内シェアトップクラスのハンファＱセルズジャパン（東京都港区）は冷凍冷蔵設備を持つ食品工場や物流施設に「ＰＰＡモデル」を提案している。国の補助金制度を活用することで、太陽光電力の調達費を抑える仕組みを構築した。2019年から始動したばかりだが、企業の導入実績は20カ所に上る。住宅用は2000棟を超える。
「ＰＰＡモデル（Power Purchase Agreement）」は電力販売契約と言われ、小売電気事業者が需要家（企業）の工場や倉庫の屋根上に太陽光発電システム（ＰＶシステム）を無償で設置し、企業は自家消費分の電気料金を事業者に支払う仕組み。先行する欧米では導入が拡大している。
ＰＰＡモデルのスキーム、企業は初期投資なしで太陽光電力を利用できる
企業は初期投資をかけずに太陽光電力を利用することができる。電力の不足分はこれまで通りの契約に従って電力会社から購入することになるが、長期間でみた場合に電気料金の削減効果が期待できる。
最大のポイントは自家消費分の電気料金が長期間据え置かれること。Ｑセルズは20年間にわたり固定価格で太陽光電力を供給する。電力使用量や設置環境（日照条件等）、電力会社との契約内容にもよるが、国の補助金を活用して還元するため、一般的な電気料金の平均単価より低くなるケースが多い。
冷凍冷蔵設備と相性が良い
ＰＰＡモデルは使用電力の一部を太陽光電力に置き換えるため、工場全体の電気料金を大幅に減額するものではないが、近年は電気料金が上昇傾向にあり、導入メリットは小さくない。
実際、産業向け電気料金の平均単価は、2019年度が１kWhあたり17円であり、東日本大震災前と比べると約25％上がっている。再エネ発電容量を増やすため、その費用負担を国内で分かち合う「再エネ賦課金」も2021年度は１kWhあたり3.36円と、この９年間で15倍にふくらんでおり、企業を取り巻くエネルギー環境は厳しさを増している。
ＰＰＡ事業推進部の安田次男営業担当課長は「たとえば電力会社と１ｋWh あたり15円で契約している企業の場合、3.36円の賦課金が上乗せされて１ｋWhあたり18.36円になる。それに対して当社は環境省の補助金を活用することで、対象施設の条件によっては10〜14円で供給できる。自家消費分の太陽光電力に賦課金はかからない。補助金を活用すれば、さらに割安な電力を供給することが可能となる」と語る。
特に土日も電力負荷が高い冷凍冷蔵設備を持つ工場や倉庫と相性が良い。同社が提案先の冷凍倉庫で試算したところ、全体の電気料金の8.5％削減が見込めた。電気料金は基本料金と電力量料金で構成される。「電力量料金に限れば13％削減が可能になった」（安田課長）という。
契約満了時に無償譲渡
これまでは太陽光発電システムを自社で購入し、電力会社に売電するＦＩＴ（固定価格買取制度）の仕組みがうまく回っていたが、買取り価格が下がり続けたことでメリットが小さくなり、自家発電・自家消費に注目が集まる。ただ、自社で新規に購入すると自家消費分は当初からゼロ円になる一方、初期投資が必要になるほか、管理メンテナンスに想定以上の費用と人員が発生し、投資回収に10年以上かかるケースが少なくない。
同社は設置費用を負担するだけでなく、メンテナンスや補助金申請の手続きも引き受ける。20年間の契約満了後は設備を無償譲渡するため、その後の自家消費分は無料になる。
同社の試算によると、発電力300ｋWのスーパーマーケットでは自社で購入した場合の投資回収期間は14年間に上った。20年目の事業収支はＰＰＡモデルを導入した場合と変わらず、ＰＰＡモデルに加えて補助金を活用した場合に比べると約1.5倍の開きがあった。
太陽光発電を早くから導入している企業の中には設備が寿命を迎えているところもあり、「リプレイス需要に合わせてＰＰＡモデルを提案したい」（安田課長）としている。
モデル別導入効果の比較表
脱炭素化の要請強まる
ＰＰＡモデルは経済効果だけでなく、脱炭素経営推進の一助になる。省エネ法でエネルギー指定管理工場に該当する企業はＣＯ２排出量削減などの目標計画を毎年提出する必要があり、高効率機器への切り替えなど設備投資の負担が重くのしかかる。ＰＰＡモデルなら設備投資を行わずに削減できる。
国際的に脱炭素化をサプライチェーン全体で進める動きもある。事業活動に必要なエネルギーを100％再エネに切り替えることをめざす世界的な枠組みの「ＲＥ100」に参加する日本企業が増えており、ＣＯ２削減を取引先にも要請することが予想される。
さらに、環境省はＣＯ２排出量に応じて課税する「炭素税」の導入に向けて動き出しており、使用電力を再エネで賄う流れは一層強まるとみられる。
導入先の１つで、食品飲料パッケージの製造販売のほか、建材向け木目柄シートの印刷やプラスチック製品の表面加飾用転写箔なども手がける�蠕藺綸張哀薀咼�（東京都品川区）は工場のＣＯ２排出量を年間140ｔ削減できる見込み。
佐藤裕芳社長は「環境規制は今後も強まるだろう。ただ、企業には投資の優先順位がある。初期投資がかからず、コスト削減につながるＰＰＡモデルは効果的」と語り、自社で構える全工場に導入する考えを示す。
ＰＰＡモデルの施工例、千代田グラビヤの潮来第三工場（茨城県潮来市）
世界トップクラスの品質で提供
Ｑセルズが提供するドイツ生まれの太陽電池モジュールは生産能力、品質ともに世界トップクラス。モジュール生産能力は累計12GWに上り、国内の出荷量は5.9GWの実績を持つ。代表機種の「ＤＵＯ-Ｇ９」は変換効率が20％超で、最大出力は390Ｗといずれも高性能。同社が採用している制御システムには、太陽光で発電した電力量と、施設で使用する電力量の需給バランスを自動で調整する機能があり、自家消費できる電力量を最大化する。
こうした高品質モジュールのサプライヤーとして、同社は国内の電気小売事業者にも供給している。
財務基盤が強固なことも強みとしている。ＰＰＡモデルは設置費用を事業者が負担し、長期間で回収するビジネスモデル。先行投資が必要となるため、導入先を広げるには相当の体力が要求される。ハンファグループは世界40カ国で展開しており、2020年度の総売上げは566億ドルを超える。米国経済誌フォーチュンの世界企業番付「Fortune Global 500」では2014年から７年連続でランクインを果たしている。
安田課長は「当社は自前の設備機器を使うため、他社に比べて価格競争力は高い。発電状況の監視や故障時の駆け付け調査、製品交換・修理などの保守点検を担い、補助金申請の手続きも行う」と語り、再エネ調達の課題を総合的に解決できると強調する。
千代田グラビヤの潮来第三工場に設置したモニター画面、発電量や消費量を見える化すること
で従業員の環境意識が高まったという
補助金採択率100％
無料ＷＥＢセミナーを開催
無料ＷＥＢセミナー申込み
用のＱＲコード
Ｑセルズは「ＰＰＡモデル」の無料ＷＥＢセミナーを企業の希望日時に合わせて個別開催している。国の補助金制度を活用したＰＰＡモデルの仕組みを解説する。同社は補助金採択率100％を誇る。
セミナーの対象は�‖斥杆�発電設備に導入費用をかけたくない、��原油換算エネルギーを削減したい、��設備の管理・メンテナンスに人員やコストをかけたくない、�な篏�金や電力会社への申請業務が面倒、�ィ咤庁韮鵝Γ贈達弌併�業継続計画）対策に興味がある――などの課題や意識を持つ企業。業種は問わない。
参加特典として「電気料金削減シミュレーション」を無料で作成する。右記のＱＲコードから申し込む。