味の素物流の関宿低温営業所(千葉県野田市)は1998年11月に完成し、翌年1月から本格稼働を開始している。最新鋭の設備や収容能力約5万tという規模の大きさが、当時話題を呼んだ。2008年、他の営業所に先駆けて自動倉庫に設置したパレットストッパーが効果を発揮し、東日本大震災の被害を最小限に抑えた。
味の素物流 関宿低温営業所の外観
同社が物流センターを「営業所」と呼ぶのは、物流サービスにおける顧客との接点であることに加え、営業の最前線に位置付けているため。
同営業所が扱う製品は、味の素グループの味の素冷凍食品が関東近辺の工場で生産した製品が8割を占め、その大半が関東工場(群馬県大泉町)から送られてくる。そこから出荷指示に従い、東日本エリアの得意先に配送している。
自動倉庫に設置したパレットストッパー
開設前には運用面で携わり、開設当初から勤務している唯一の社員でもある尾柴久史所長は「最新鋭の設備を導入したため、ハード面で更新したものは特にないが、2008年に他の営業所に先行して自動倉庫にパレットストッパーを設置したのは大きかった」と振り返る。
パレットストッパーはパレットの4角を鉄板で固定する装置。全12段ある自動倉庫の棚のうち、上から3段目までに設置したことで、東日本大震災の際は被害を最小限に抑えることができた。
尾柴所長は「もし自動倉庫内のクレーンが損傷していたら、震災直後は輸送手段が限られていたため、部品が調達できず、長期間に渡って稼働停止に追い込まれていたかもしれない。パレットがほとんど落下せず、1週間で復旧できたのは不幸中の幸いだった」と語っている。
味の素冷凍食品の関東工場と関宿低温営業所間の輸送業務には大型トラックを使っているが、人手不足に対応するため、トレーラー2台を来春購入する予定。大型トラックがパレット16枚分の荷物を運べるのに対し、トレーラーは24枚分と1.5倍に効率が高まる。トレーラー2台が2往復すると、大型トラック2台分(パレット32枚分)のコストが浮く計算になる。
ドライバーだけでなく、倉庫内の作業員も集まりにくくなっているため、女性作業員が増えた。パートタイマーを含め7名が在籍し、そのうち5名が男性と同じ業務に携わっている。
ラベルの情報を機械で読み取り、配送先別に自動
で仕分けるエリア
業務の流れは大まかに午前中が入庫作業。出庫は午後2時ごろから19〜20時までと、交代して翌日の午前5時ごろまで続く。建物は長方形になっており、長い辺に22台分、短い辺に13台分のバースをそれぞれ備えている。ケース単位で小分けが必要な出荷と、パレット単位の出荷の両方に対応できる。入庫時に貼ったラベルを機械が読み取り、自動的に配送先別に仕分ける仕組みは、18年近く経っても古さを感じさせない。
尾柴所長は「最近になって圏央道の開通区間が延び、開設当初描いていた状況に近づいてきた。完成すれば立地の優位性がさらに発揮できる」と期待している。