トラック納品時の待機時間を短縮する新たなスキームを開発

 ヤマトホールディングス傘下のヤマトグループ総合研究所(=ヤマト総研)は、社会的課題になっているトラック納品時に発生する長時間の待機時間を短縮するため、RFID技術を活用した納品業務と車両予約システムなどを連動した新たなスキームを開発した。特許を出願中。
 発送元、ドライバー、納品先が携帯端末で相互に入庫スケジュールの確認や連絡ができるアプリを活用することで、事前に納品時刻や納品口の予約ができる。
 発送元と納品先の双方の拠点で、電波の送受信により非接触でICチップの中のデータを読み書きする技術のRFIDを活用した入出庫検品業務を行う。出庫作業時に、RFIDタグを添付したパレット、商品、トラック情報を紐付けたASNデータ(事前出庫明細データ)を作成し、事前に納品先に送ることで、納品先ではRFIDタグの読み取りのみで検品作業が完了する。
 ASNデータを事前に納品先に送ることで、どのトラックを優先的に納品するかといった車両の入庫スケジュール調整ができる。

 現在はトラックの先着順に納品を行うため、納品開始時刻の数時間前から多くのトラックが待機し、納品までに長時間の待機時間が発生している。
 入庫検品時に目視や手書きなどアナログ作業が多く、時間がかかる。また、入庫作業を荷受け場で行うので、入庫スペースが限られている場合は、先に納品した商品の処理が終わるまで次の作業を開始できず、待機時間がさらに伸びる。
 トラックから商品が納品されるまで、「どの商品」が「どのトラック」の「どのパレット」に積まれているか分からないため、当日優先的に入庫したい商品があっても、優先できず、結果として庫内での作業遅延などが発生している。

 発送元、運送会社は、ドライバーが事前に予約した時刻に納品口に到着すればよく、入庫検品もスムーズなので、施設周辺で長い時間待機する必要がなくなり、生産性の向上と労働環境が改善する。また、RFIDの活用により、出庫検品時の業務負荷を軽減し、人的作業によるミスを削減する。
 納入先はRFIDの活用により、入庫検品作業の生産性が向上する。必要な商品を優先的に入庫することで、出荷作業がスムーズになり、顧客の満足度が向上する。
 環境に対する配慮としてはトラックの待機時間削減により、アイドリングによる二酸化炭素排出量を削減できる。また、納品先施設周辺の待機トラックを減らし、近隣住民の安心・安全な生活環境を確保する。

 昨年4月に設立したヤマト総研は、この様な社会的課題に対し、物流を切り口とした新たな技術・ソリューションの研究開発などを行っている。
 今回、全国物流ネットワーク協会などの業界団体やトイレタリー業界の各メーカー、ヤマトロジスティクスと連携し、スムーズで効率的な納品ができるスキームを開発した。
 ヤマト総研は、実用化に向けた実証実験の第1弾を、トイレタリー業界で物流課題に積極的に取り組むライオンと実施する。
 今年12月までに実証実験の効果を検証し、実用化に向けて調整する。このスキームをライオンの自社内拠点間の物流に適用するだけでなく、トイレタリー業界全体に展開し、さらにはトラック運送会社やトラック運送業務を伴う様々な企業・業界に向けたプラットフォームとして提供することをめざす。