有力食品機械メーカーのトップ座談会（上）
揚げ物、冷凍麺、冷凍米飯など、今ではどこにでも見られるような冷凍食品は、急速凍結やバラ凍結などの進歩と共に世に生まれてきた。今も自然解凍や、本格的な炒飯など、新たな需要が技術の進歩と共に生まれている。新年にあたり、今求められている食品機械と、これからの進歩の方向性について、食品機械メーカーのトップに忌憚なく語ってもらった。
今、求められる技術とは
山本社長
――今、食品メーカーから何を求められ、どのような技術で応えているか？ 連続フライヤーやオーブンで冷食産業に関わりが深いアサヒ装設さんは？
山本洋志（アサヒ装設社長） 当社は40年間食品機械産業に携わってきた。この分野ではいわゆる「はしり」と言える。高度成長期はフライヤーを作れば売れた。しばらくして省エネを求められるようになり、省エネ化もずっと手掛けてきた。コストダウンの要求にも応えられていると思う。しかし、ここにきてユーザーからの要望は変化している。「以前と同じ機械ならいらないよ」と言われる。昔の要望は「作る」だったが、今は「創造」が求められる。食品それぞれの特性やメーカーの要望に合わせて新しい調理機械を創造していかなくてはいけない時代だ。
キーワードとなるのが「おいしい」。昔はコストや「省エネ５％」といった優位性があればＯＫだったが、「おいしさ」と言われても、漠然としている。消費者の要望が多様化している時代に、誰にとっての「おいしさ」なのか、正直ジレンマに陥る。
当社は開発部門の人員も増やしているが、おいしさは個人によって感じ方が違う。食品メーカーによっても基準が違う。製造方法も変わった。例えばハンバーグ。昔は１台のオーブンで済んだ。今はおいしくするために「焼き」だけで４工程を費やすものもある。もう一つの変化は、海外での需要が高まり、海外に進出するようになったこと。
大迫常務
――確かに「おいしい」は食品の価値の根本だが、とらえどころがない。冷凍めん産業に強いソディックさんは？
大迫健一（ソディック常務食品機械事業部長） この業界一筋で50年になった。ユーザーの要求が変ってきたのはめん業界も同様。めん類は乾麺、冷凍麺、調理麺など様々で、スパゲティ、うどん、蕎麦等ジャンルも広い。当社はようやく全ジャンルに対応できるようになった。しかし、国内の市場がシュリンクしており、一時期に比べ国内のパイは半分になっている。今は和食ブームで海外からの引き合いが多くなっている。（食品機械のトム事業部として）10年前に（工作機械メーカーの）ソディックグループに入ってからはタイや中国にも拠点を持つようになった。新年度は中国での販売を拡大しようとしているところ。当社は特に冷凍めん関連の伸びが大きい。アメリカは広大なので、冷凍めんの設備の需要があり、すでに販売実績もある。
宮島取締役
――冷食に欠かせないのが凍結技術だ。前川製作所さんは？
宮島昭治（前川製作所取締役） 当社は冷凍機を柱にしているが、冷凍のみならず、食品産業に多様に関わっている。特に、今は人手不足の解消をどうするかというニーズが強い。当社は鶏の骨付きもも肉全自動脱骨ロボット「トリダス」を開発してきた経験もある。そこで、その流れの中で色々なロボットを作るようになった。まだ特定ユーザーだけのオーダーメードだが、それを水平展開できればと考えている。異物混入も大きな問題だ。当社はそれをエンジニアリングで対応している。海外展開は、北米、南米、アセアンが主で、和食が注目されていることから特に麺類と米飯関係の製造ラインを手掛けている。麺はソディックさんと、米飯はアイホーさん、サタケさん、カジワラさんと一緒に手掛けている。
――日本と海外の比率は？
宮島 全社的には圧縮機などもあるので、だいたい海外６対国内４の比率だが、海外の食品工場のエンジニアリング売上げはまだ数％しかない。この部分は今後伸びると期待している。
究極は「おいしさ」の具現化だ
柳井社長
――フリーザーの�盒狭�業さんは？
柳井順（�盒狭�業社長社長） 当社はフリーザーのパイオニアとして56期目を迎えた。50年以上も続けたおかげでトンネルフリーザーの名称も定着している。先ほど山本社長が、「求められているのは最終的にはおいしさなのだ」とおっしゃった。フリーザーも「冷えればいい」ではなく、時代の要求を常に反映させていかなくてはならない。
――最も大きな変化は？
柳井 今は安全安心の要求が非常に高まっている。フリーザーメーカーが淘汰された時代を当社が生き残ってこれたのは、他社になかった庫内洗浄や、蒸気による殺菌ができたことだろう。さらに「見て安心」ということで、フリーザーに大きな開閉式の扉をつけた。最近はクリーン度がクラス1000の冷却装置も開発し、既に30台の出荷実績がある。当社は小さな会社だが、そうした変化に対応してきたことが強みだと思っている。福島工業グループに入って７年目となり、ユーザーに提供できることも増えた。ソディックさんに前工程を担当していただき、グループの省研で搬送分野も取り込み、大森機械工業さんの包装工程ともラインを組ませてもらっている。ほうれん草や冷凍炒飯のＩＱＦなどニーズは多種多様だが、そうしたニーズに応えられるメニューを用意できることが強みだろう。
――大能力の大型装置のニーズも出ていると聞く。
柳井 国内で最大能力のトンネルフリーザーを昨年納入し、今年から本格的に稼働する。また、近年、大型、中型が出てきている。スパイラルの中型、大型の案件も増えている。
大迫 冷凍食品の凍結時間は過去１０数年で半分くらいになったと思う。同じ大きさでも冷凍能力が上がっていると言えるのでは。
神崎部長
――フリーザーに必要な冷凍機の神戸製鋼所さんは？
神崎奈津夫（神戸製鋼所 冷熱・エネルギー部部長兼技術部長） 当社はスクリュー式、レシプロ式の圧縮機を手掛け、冷凍機では数十年の歴史がある。１３年前に２段圧縮でインバーター付きの省エネ冷凍機を世界で初めて発売した。これにより２０〜３０％の省エネを実現した。インバーター制御は使い勝手も良く、多くのユーザーに使っていただいている。
――冷媒問題についてはいかが？
神崎 低ＧＷＰ化への対応については、改正フロン法で２０２５年までの具体的な改善目標が出された。約１０年前にはオゾン層破壊防止法の観点でＨＣＦＣ（Ｒ２２）からＨＦＣ（Ｒ４０４Ａ）へ転換されたが、Ｒ４０４Ａの高いＧＷＰが問題視されており、そこそこ早く変わっていくんじゃないかと思っている。ところが、海外では中国でも省エネ化が進みつつあり、インバーター付きの圧縮機も導入されているが、安全性の問題でアンモニアからフロンに戻る動きもある。
――アンモニアとは限らないが、中国の工場で爆発事故のニュースを良く見る。管理力の問題か。
柳井 フロンについてはユーザー側が漏らす問題も大きいと思う。
宮島 この問題は、管理能力とシステムの両方の問題だと思う。日本では２重３重に安全対策が施されている。
�皸羲萃�役
――計量機のイシダさんに求められているものは？
�皸飜�（イシダ取締役兼日新電子工業社長） 当社は今期で122周年、社長は５代目と長い歴史を持つ。計量機から始まったが、飛躍的に伸びたのは約40年前のコンピュータスケールの発売から。もともとはピーマンの計量から始まった。今はほとんどの冷食メーカーに導入していただいている。これも人手不足と安全安心のニーズによるものだろう。人手不足のため外国人を使っている食品工場が多いが、それはそれで管理がしにくい。そこで、今は誰が操作しても同じことができる機械が求められる。それによって品質の安定化も図れる。操作パネルも多言語でできるようにしている。
――中には計量しにくい食品もある。
�皸罅［篆�業界におけるコンピュータスケールの用途は凍菜の様なものから始まった。今ではほとんどの加工冷凍食品の計量に採用をいただいている。冷凍ピラフなど難しい用途にも使えるようになっている。冷凍ピラフは具と米の比率が難しい。偏らないように具と米飯を別々に計量して合わせることができるようになった。これも結構評価された。冷凍なのでマイナス温度帯でもトラブルが発生することなく稼働しなくてはいけない。常に冷凍環境で順調に稼働するノウハウを蓄積してきた。もっとも、昔はそれだけでよかったのだが、今はさらに要求が厳しくなっている。機械を納品したらすぐに生産を開始するようになっており、テスト生産がほとんどなくなっている。勘に頼るので機械メーカーとしてはリスクが高い。
――工場の「垂直立上げ」は近年本当によく耳にするようになった。
�皸罅，修海如◆淵ぅ轡世任蓮烹昂遒房�賀の工場をリニューアルしてチルドと冷凍のテストルームを新設した。冷凍環境の部屋とチルド環境の部屋で、実際の食品工場と同じ環境を作り出し、テストしている。これでユーザーはラインの垂直立上げができるようになった。
――冷食メーカーには朗報だ。
�皸罅，發Π譴弔魯轡好謄牴宗�昔は計量機単体で売っていたが、今は包装からケーサーまで扱っている。つまり、装置と装置のつなぎの部分も重要になったということ。できるだけ問題点を潰した状態で納品できるようになった。そのためにすごく広い工場で、システムとして組み立てることができるようにしている。（次号へ続く）
関連機械メーカー・新春座談会の参加者
▽アサヒ装設�蝓〇核棔〕了屐ー卍�
▽大森機械工業�蝓‖膺后〕�夫 社長
▽�盒狭�業�蝓〔�井 順 社長
▽�蠢粟鄒什扈蝓ゝ榲隋‐室� 取締役
▽ＦＳＰ�蝓‘�尾 貴幸 取締役営業本部長
▽�螢愁妊�ック 大迫 健一 常務食品機械事業部長
▽�螢ぅ轡澄●皸罅〔� 取締役（日新電子工業�蠎卍后�
▽�蠖生誉醜歃蝓／精蝓‘狡塗廖ゝヽ�事業部門圧縮機事業部 汎用圧縮機本部 冷熱・エネルギー部部長兼技術部長