骨取り切身魚は残骨ゼロが最優先
クアンヒューフーズ社
水産加工メーカー、オカフーズ（東京、岡孝行社長）はベトナム中部に位置するダナン市の専用協力工場で、日本向けに骨取り切身魚などを生産している。この工場では、作業のスピードも重要な要素だが、骨取り切身魚の残骨をなくす精度の高さを最優先事項に掲げて作業をしている。
外観
製品保管庫
オカフーズの協力会社、クアンヒューフーズ社（クアン会長）の工場が完成したのは2013年。前身の工場を含めると、オカフーズのベトナムでの生産は10年を超す。従業員は当初の30人規模から145人に、生産量は製品ベースで年間1200ｔ超、アイテム数はおよそ100品目に拡大した。冷凍庫は現状の1200ｔに、500ｔ分を増設する。１年以内に完成する予定。
骨取り作業は３人１チーム
取材日の生産スケジュールは鱒、秋鮭、ニュージーランド産ほきの加工。
鱒は、ひれやうろこを取る下処理をほどこした後、次の工程で３枚におろしてはらわた、骨を取り、フィーレに加工する。下処理工程は一見地味だが、その後の工程の進捗を左右する重要なポジションでもあるという。
骨取り作業は３人１チームで、１人がチェックを担当する。その後、Ｘ線検査装置を通し、大型ディスプレイに映し出して残骨の有無をチェックした後、目視でも確認する。残骨をなくす精度の高さを最優先事項に掲げている。
凍結したフィーレは品温を少し上げて切りやすくしてから切り身に加工し、再度凍結する。凍結前にキシロースを塗布すると、スチコンで調理しても焼き目が付く。包装後、異物検出機を通して、製品保管庫に搬送する。
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工場の心臓部とも言える冷凍機は前川製作所製。大型の自家発電装置も備える。
排水処理は、沈殿槽とバクテリアを組み合わせた排水処理システムで、一般河川と同じレベルの水質に浄化する。沈殿槽では、泳いでいる魚を目にすることができる。汚泥は月に１回程度、専門業者が回収する。
新規事業の刺身の生産に向けて工場内にクリーンルームを設け、アルコールと電圧を組み合わせて急速凍結する日本製の凍結機をこのほど導入した。
寿司店向けの販路を持つパートナーと組んで商品設計し、まずは日本市場に供給する。将来的には北米や、ベトナムをはじめとする東南アジアでの展開も視野に入れている。
始業前に全従業員が社内を清掃
クアン会長
オカフーズの東京本社でも実践している「環境整備」と呼ぶ始業前20分程度の清掃活動を、クアンヒュー社も５年前から取り入れている。毎日、工場の各所を分担して清掃する。当初はベトナムの文化になじまないと、クアン会長をはじめとする周囲の反対意見が強かったものの、オカフーズの社員が率先して清掃する姿を見せ、次第に定着した。結果、工場内が清潔に保たれるだけでなく、従業員としての自覚や意識が高まり、連動して生産性の向上につながっているという。
中国の協力工場でも同様の清掃活動を実践している。
日本の喫食現場を視察「骨は残さない」
オカフーズは、ベトナムの工場で働く従業員を毎年日本に招待し、問屋の物流施設や老健施設などを訪問。自身が生産した商品がどのようなルートで流通し、誰が、どういう現場で喫食しているかを理解してもらう取り組みを進めている。
高齢者が骨取り魚を喫食する姿を見た骨取り担当のベトナム人女性は、これまでの「骨は１本くらい残っていてもしょうがない」という考えを改めた。女性の口から同じセリフは二度と出てこなくなったという。
一方で、オカフーズの社員がベトナム人従業員の実家を訪問する活動にも力を入れている。職場での様子を写真で紹介すると、家族は安心感や親近感を覚える。その甲斐あって、従業員の約４割は夫婦、親子、兄弟など身内が働いており、離職率の低下につながっている。
平均賃金は周辺をやや上回るレベルに設定している。