厨房向け換気システムを手がけるHALTONは、赤外線センサーで厨房機器の稼働状況を把握し、それに応じて排気と給気量を自動調整するシステムを構築した。従来システムに比べ、排気ファンの稼働を約6割抑えられるケースもあるという。欧州に比べて作業環境が出遅れている日本の厨房に一石を投じる。
町井社長
――厨房環境を改善するシステムを手がけている。
町井 ドイツで誕生した「ヴィンボック換気天井システム」を提案しています。このシステムは温められた空気が上昇するという自然の法則を応用し、給気した冷たい空気が暖かい調理排気を押し上げて天井から排出する置換換気を行うことで、夏でも涼しい厨房環境とします。導入先は病院厨房やケータリングキッチン、セントラルキッチンなどの大規模厨房から、ホテルやレストランなどのキッチンまで、幅広いニーズに対応します。
――医療法人の徳洲会グループが千葉県柏市に昨年建設したセントラルキッチンにも、この換気天井システムを広いスペースで導入した。
町井 広いスペースで導入する換気天井システムの中でも、フィンランドにあるハルトン本社が開発した「マーベルシステム」と組み合わせる施工は、今回が初めてです。
――「マーベルシステム」とは?
町井 厨房内の機器の稼働状況を温度で検知し、排気や給気のレベルを調節するシステム。換気フードや天井換気システムに取り付ける直径2cmほどの赤外線センサーが、厨房機器の表面の温度を感知し、発熱量に応じて機器の稼働状況を判断します。その情報を換気制御のコントローラーに送り、厨房内全体の温度を測る温度センサーなどのデータと合わせて排気量を自動調節します。従来の換気システムに比べ、排気ファンの稼働を約6割抑えられるケースもあります。
――厨房環境に対するユーザーの意識は。
町井 換気天井システムが日本に導入し始めたのが10年前。欧州では1960年代から導入が始まっていますから、出遅れています。この10年で日本でも意識は高まっているものの、全体ではまだまだです。
――何が足かせに。
町井 欧州と違って、日本は作業スペースを規定する基準が進んでいません。欧州ではシェフや厨房スタッフが働く環境に対して、“快適に”作業できるようにと明記していますが、日本では“死なない程度に”までで留まっています。日本人の性格も少なからず影響しています。どんなに過酷な状況に置かれても、日本人スタッフは耐えて、頑張ってしまいます。こうして我慢することが“美徳”として常習化しています。声を挙げられずにいるのです。
――声なき者の声を何とかしたい。
町井 そうした中でも、理解のある経営者や責任者は現場スタッフへの配慮も重んじてきているため、換気システムに関心を持っていただくようになりました。それがこの10年です。私たちもより設備の精度を高め、欧州と日本の厨房環境の現状や格差を正しく説明し、啓発していかなければなりません。
――着実に前進はしている。
町井 換気天井システムだけでなく、今回のように温度検知の「マーベルシステム」と組み合わせて提案できるようになりましたので、厨房を改善する意識はより前進すると見込んでいます。導入のイニシャルコストは多少高くなりますが、排気量制御による電気代の削減効果は明確です。わずか数年で投資が回収できますので、責任者にとっても負担にはならないでしょう。
日本に法人ができた頃は、私たちのような立場は少数派でした。しかし、全体ではまだまだですが、この10年で厨房環境の改善への関心は確実に高まっているのも事実。将来の標準装備も夢ではないと信じています。