農水省消費・安全局の井内消費者情報官は、「水産タイムス」編集部が主催した水産食品の安心安全座談会に出席し、アレルギー食材の表示開始とその後について語った。
井内情報官は「必ず表示される必須の特定原材料は、それまでは卵、乳製品、小麦、ソバ、落花生の５品目だったが、平成20年6月、エビ、カニの２品目が追加されて、７品目になった。２年間は経過措置的なもので、平成22年６月からエビ・カニについても表示完全実施となる。関係の業界の方々は心配したと思うが、我々が見ている限り、今のところ完全実施にはなったが、それまでの経過で混乱が生じたということはないと思う。大きな問題が生じていないと聞いている。重篤な食物アレルギーの症例というのは平成20年で見ますと2500件ぐらいあった中で、エビは3.0％、カニは0.9％ということで、多いのは鶏卵や、乳製品、小麦ということですので、エビ・カニは症例としても多くはない状況」と語った。
「近年乳幼児から成人まで食物アレルギーの症状を起こす人が増えている。アナフィラキシーショックも年々増加してきている。食品衛生法の関連法令、施行規則にも書かれているが、平成14年から改正されて、アレルギーを起こしやすい物質を加工食品に表示するということになった。また、食品表示行政は平成21年9月から消費者庁に移管された。「表示違反の公表」では、消費・安全局と消費者庁と連携して対応をしており、平成22年10月、指導関係を若干強化する見直をした。JAS法に基づく飲食料品の品質表示基準の違反の事案にかかって、指示・公表する場合があるが、どういう場合に指示・公表するかという指針の運用改善を行った。JAS法に基づく表示違反については、指示・公表を基本として、常習性がなく過失による一時的なもので直ちに改善方策を講じている場合は、指導に止めるということにしていたわけだが、指導の取り扱いのうち、直ちに改善方策を講じている場合の改善方策はどういうことなのかをはっきりさせようということで強化をした。これまでの表示の修正、商品の撤去などの表示の是正を行っていることに加えて、新たに事実と異なる表示があった旨をきちんと出すように、例えば社告、ウェブサイトに掲示、店舗内の告示などの中から的確にやれることを選んで、速やかに消費者に情報提供しなくてはいけないという形にした。そうでなければ、指示・公表の厳しい処分を行うということで、平成23年1月1日から施行した。また、JAS法違反にかかる指導の件数を集計して定期的に公表するという風に変えた。平成22年4月から9月で指導した件数は261件ある。生鮮と加工が半々ぐらいで、原料原産地表示の誤表示や欠落が半分ぐらいを占めている。
JAS規格違反にかかる指導が29件で、生鮮が6割、加工が4割ぐらいで、多かったのが有機でないものに有機という表示をしたものが7割ぐらいだったという状況です。私どもとしては消費者庁と一緒に表示違反についての対応を強化したということだ。
次に加工品の原料原産地表示はいろいろと議論があるが、JAS法に基づく加工品の原料、原産地表示は平成13年から個別品目ごとに順次対応している。平成18年に20の食品群に義務付けの対象を拡大し、平成21年には緑茶飲料と揚げ落花生を追加した。消費者庁では義務表示の着実な拡大に向けて、消費者と事業者の方、関係者の方の参加を得て意見交換会を昨年3月に開きた。これから義務化すべきだという要望が多かった品目について、流通実態などを調査した。その中で鰹節、リンゴジュースなどの果汁飲料についても要望があったが、いろいろな議論をしていく中で、黒糖及び黒糖加工品、昆布巻きを義務化することについて、昨年11月消費者委員会へ諮問をしました。消費者委員会の食品表示部会で審議がありまして、現在パブリックコメントを行ったところだ。これが原材料の表示の現状」とした。