湿度100％で低温解凍を実現
冷凍原料の解凍需要を掘り起こす
プロトンエンジニアリング 代表取締役 庄司晃氏
庄司社長
プロトンエンジニアリング��（東京都品川区）が開発した「プロトン解凍機」は湿度100％の庫内環境を作り出し、冷凍原料の低温解凍を実現する。コロナ禍でも引き合いが強まっており、2022年２月期の売上高は前期比13％増を見込む。解凍スピードの速さと大容量でもムラなく高品質に解凍できる技術が評判を呼ぶ。
庄司晃社長は「表面温度を10℃以上にしたくないというシビアな要望が増えているが、当社は十分に対応できる」と力強い。
――食品工場を中心に提案している。どのような解凍ニーズが多い？
庄司 メイン顧客である畜肉メーカーからの受注は堅調に推移していますが、この１年で果汁メーカーからの引き合いが増えました。ドラム缶やペール缶などに入った冷凍オレンジ果汁、冷凍イチゴなど、処理量10ｔ以上の原料解凍に使われています。また、レモンサワーの市場が伸びており、冷凍レモン果汁の需要も増えています。
果汁メーカーでは受注量が急に増える場合があり、早く解凍したいというニーズがあります。ドラム缶に入った冷凍原料は自然解凍だと夏場で数日、冬場で10日間程度かかりますが、「プロトン解凍機」であれば24時間で解凍できます。
――食品工場は以前よりも解凍工程を重視するようになった？
庄司 解凍品質の向上やドリップ減少などに対するニーズは高まっていますが、解凍機の導入を真剣に考えている現場では、それ以上に解凍から原料投入までのリードタイムをいかに短縮できるかが決め手になります。生産現場を効率よく回せるのなら早く導入したいという雰囲気を強く感じます。
――やはりスピード解凍がカギを握る？
庄司 「プロトン解凍機」は庫内温度を10〜30℃に維持したうえで湿度100％にできる特許技術が最大の強みです。熱源が同じ蒸気でも競合他社より解凍スピードは速い。さらに、解凍は凍結と同様に風速が重要な要素になりますが、この風速を制御する技術も大きな武器です。
２段階プログラムで表面温度を抑制
――解凍品質の要求レベルが上がっていると聞く。
庄司 表面温度を10℃以上にしたくないというユーザーが増えています。当社は表面温度を２段階でコントロールする解凍プログラムを搭載しています。
第１段階では庫内温度を短時間で25℃に上げて解凍を進めます。食材の中心温度が−５℃近くまで上がってきた段階で第２段階に移行し、庫内温度を18℃に下げます。表面温度を上がり過ぎないようにしながら中心を解凍して冷蔵に切り替えます。これによって表面温度の上昇を抑え、中心との温度差を小さくすることができます。
湿度100％の庫内環境で冷凍原料の低温解凍を実現する「プロトン解凍機」（手前）と
均等磁束と電磁波の技術使って急速凍結する「プロトン凍結機」
バナメイエビの一次解凍に採用
――提案先は食品工場にとどまらない。
庄司 量販店にも売り込んでいます。バナメイエビのブロック解凍に使われるなど導入実績が出始めています。
冷凍のむきえびは洗浄する必要がありますが、氷の膜で覆うグレーズ処理を行っているため解凍しないと洗えません。解凍が中途半端のまま洗浄すると尾の部分が取れることがあるほか、ブロックの一部分に熱が入りすぎて赤くなることもあります。そこで「プロトン解凍機」で解凍テストを実施しました。
2.5�圓離屮蹈奪�を庫内温度22℃で試したところ、２時間半で完全解凍に至りました。水槽に投入すればバラバラになり、十分に洗えます。「作業効率が上がった」と高い評価をいただき、処理能力７ｔの解凍庫を納入しました。
海岸の沿岸部と違って内陸にある工場は海水を使えないため、解凍や洗浄に大量の水を使用します。今回は一次解凍をしっかり行うことで、水の使用量を大幅に減らすことにも貢献できました。
（しょうじ・こう）1969年北海道生まれ。三菱電機冷熱プラント�蝓�菱熱工業�蝓↓衂�豊フリーズシステムズを経て、2017年プロトンエンジニアリング�蠢篭函�食品冷熱工事、食品装置「凍結、解凍」の開発・設計に長年従事する中で、自身が開発した「プロトン解凍（湿度100％の低温蒸気解凍）」を食品業界に周知し、活用してもらうため解凍システムの専門メーカーとして立ち上げた。北海道工業大学機械工学科卒。