ビール苦味成分にアルツハイマー病予防効果

 キリンの健康技術研究所は、東京大学、学習院大学と共同で、ホップ由来のビール苦味成分イソα酸がアルツハイマー病予防に作用することを世界で初めて解明した。
 50−70代の男女25名にイソα酸を4週間摂取してもらい、脳活動の変化をヒトや動物の脳、脊髄の活動に関連した血流動態反応を視覚化する方法の1つであるfMRIで測定した。
 その結果、イソα酸にアルツハイマー病の進行を抑制する作用があることを見出した。また、この作用は脳内の老廃物を除去するミクログリアという細胞の活性化と、アルツハイマー病の原因物質であるβアミロイドの蓄積や脳内の炎症を抑制することにより起こることを解明した。
 この研究成果は12月1〜3日に開催された「第35回日本認知症学会学術集会」で発表した。

 高齢者の増加に伴い、日本では460万人、世界では2430万人近くが認知症とされ、国内外で大きな社会課題となっている。アルツハイマー病に代表される認知症には十分な治療方法がなく、日々の生活を通じた予防に注目が集まっている。
 これまでの疫学などの研究では、適度な量の酒類の摂取は認知症を防御する因子として報告されている。特に赤ワインのポリフェノールは認知症への効果について多くの研究報告があるが、ビールの成分についてはあまり研究が進んでいなかった。
 ビールに華やかな香りと爽やかな苦味をもたらすホップは、ビールの原料として1000年以上使用されている。同社ではこれまでホップ成分の肥満抑制効果、発がん抑制効果、骨密度低下抑制効果などを解明してきた。