業界の垣根超え6社結集
AI搭載のスマートストアを4月オープン

 トライアルカンパニーサントリー酒類日本アクセス日本ハムフクシマガリレイムロオの6社は「流通情報革命」をテーマに昨年発足したリテールAIプラットフォームプロジェクト「リアイル」を本格始動する。小売業の売上げ増や生産性の向上に寄与すると同時に消費者に新たな購買体験を提供する。都内で合同の戦略発表会見を2月26日開いた。

千葉市の「トライアル長沼店」に導入

フクシマガリレイのAIショーケース、棚上にAIカメ
ラを備え付けている

 小売り、メーカー、卸、物流、冷蔵ショーケースの有力企業が業界の垣根を越え集結した。「リテールAI」を軸にしたエコシステム(分業と協業による企業の集合体)を構築し、各社のリソースにAIやIoTなどのデジタル技術を組み合わせてスマートストアの実現をめざす。まずは4月24日にリニューアルオープンする「トライアル長沼店」(千葉市)に実装する。

 今回のプロジェクトでキーデバイスを持つのがトライアルグループの㈱Retail AI(東京都港区、永田洋幸社長)。トライアルグループはITの活用による流通小売業務の改善に約30年にわたって取り組んできた。スーパーなど約250店を全国で展開し、独自に開発したAI技術をリアル店舗へ導入している。

 プロジェクトではリテールAIカメラやセルフレジ機能を搭載したレジカート、デジタルサイネージなどを各社が活用し、最適な棚割り提案や欠品検知、動線分析、需要予測、自動発注、ダイナミックプライシング、商品レコメンドなどを試みる。

 永田社長は「流通産業の変化は小売り、メーカーだけの部分最適では効果を発揮しない。全体最適が可能なプラットフォームを業界全体へ波及し、変化を促すことが必要」と語り、オープンイノベーションの重要性を強調した。

チャンスロスを可視化し最適発注へ

電子棚札によるダイナミックプライシングで廃棄ロスを
防ぐ

 日本アクセスの今津達也マーケティング部長代行は、トライアルの店舗で実施しているデイリー売場の分析結果から「店側が廃棄ロスを減らそうとするあまり、発注数量を抑え、チャンスロスが発生していることがわかった」と指摘した。

 そのうえで「リテールAIカメラを活用することで売場の可視化が可能になり、これにPOSや人流(動線)、商品の充足率など各種データを組み合わせればチャンスロスも可視化でき、定量分析が可能になる」と語った。

 トライアル長沼店では分析結果に基づいて発注システムとの連動、品揃えの見直し、電子棚札を活用したダイナミックプライシングを実践し、「小売業の売上げ拡大に向けて、卸売りの機能強化を図る」と語った。

AIショーケースで店舗の売上げに貢献

 日本ハムの小村勝マーケティング推進部長、サントリー酒類の中村直人営業推進本部長はメーカーの立場から顧客データがひもづいたID-POSとAIの連動による売場の最適化や販促活動、需要予測、新商品開発などにつなげるとした

 冷凍冷蔵物流ムロオ(広島県呉市)の山下俊一郎社長はトライアルの基幹物流センターで、同業異業種他社が汎用センターとして活用することで倉庫・配送業務の効率化をめざすAI物流センターの構想を明かした。

 フクシマガリレイの福島豪専務は、冷蔵ショーケースにAIカメラや電子棚札、デジタルサイネージ、IoTビーコンを搭載して欠品検知や人流検知、商品検知などを行うとし、「お客様(小売業)がもうかる『売れる』AIショーケースを提供する」と語った。

      AIショーケースで人流検知を行い、最適な棚割りを実現する

「リアライル」の参画メンバー、左からRetail AIの永田社長、サントリー酒類の中村直人営
業推進本部長、日本アクセスの今津達也マーケティング部長代行、日本ハムの小村勝マーケ
ティング推進部長、フクシマガリレイの福島豪専務、ムロオの山下俊一郎社長