日本初の二酸化炭素直膨式のフリーザー
高橋工業（大阪市、柳井順社長）は二酸化炭素直膨方式を採用したフリーザー用の冷凍ユニット「Σ」（シグマ）を開発した。同方式はショーケースなどで使われているものの、フリーザーに利用するのは日本初であり、世界的にも珍しい。第１号機をブロイラー処理のウェルファムフーズ岡山事業所（新見市）が昨年末から導入しており、大幅な省エネ効果を実証している。
柳井社長
二酸化炭素直膨方式の冷凍機は欧米でも多く普及しており、日本でも脱フロン型の家庭用冷蔵庫や小型のショーケースに利用され始めている。近年はスーパーマーケットやコンビニエンスストア、冷凍冷蔵庫に導入されている。この分野では高橋工業の親会社である福島工業が先行しており、技術的には確立している。
これまでフリーザーに使われなかったのは、冷媒の臨界温度が31℃と低く、フロンなどの冷媒に比べ数倍も高圧にしなくてはならないため、負荷変動による不具合が出ないようにする技術の難易度が高かった点がネックだった。
ショーケースや冷蔵庫が24時間稼働し、温度帯がほぼ一定なのに比べ、熱い食品の急速凍結を行うこともあるフリーザーは負荷の変動が大きく、毎日の清掃など稼働と停止を繰り返す。
このため、高橋工業は福島工業グループと技術連携を徹底して行い、技術の確立を図ってきた。
コンパクトな二酸化炭素ブースターユニット
二酸化炭素直膨システムの利点の一つは、冷媒が無害で無臭であること。アンモニア冷媒で必要な、無害化するための仕組みや設備が不要で、設置スペースを小さく抑えることができる。
効率も良く、「Σ」はフロンのＲ‐４０４Ａと比べ消費電力が10〜15％削減できているという。
「現在、その確証を得るために実測値データを計測している」（高橋工業）。
２段圧縮方式。コンプレッサーは二酸化炭素冷媒の高圧運転に実績のある海外製。さらに、遠隔監視システムを導入して、いつでもどこにいても装置の状態を把握できる体制を整え、安全性を担保出来る仕組みを築き上げた。
同社では次世代の自然冷媒フリーザーシステムとして、補助金申請なども検討し、積極的に販売する方針。
６月にビッグサイトで開催されるFOOMA JAPAN（国際食品工業展）に、高橋工業は小型のテスト機を出品する。
省エネをウェルファムフーズが実証
二酸化炭素直膨方式のスチールベルト式
トンネルフリーザー90
第１号機を導入したウェルファムフーズ岡山事業所は環境への配慮、省エネ、取り扱い、人体への影響を検討して採用したという。
担当者は「国内初の仕組みと聞いて不安もあったが、今は採用して良かったと思っている。自然冷媒は取り扱いが難しいと思っていたが、全く問題はなかった。大幅な省エネにもつながっており安心して使っている」と評価し、「今後は、このシステムばかりになるのでは？」と語っている。