年商1000億円めざし、“人”に投資続ける
福島工業 専務取締役 福島 豪氏（営業本部長 兼 東日本支社長）
めざすは年商1000億円――。2014年はこの意識がより明確になった年だと振り返る。それは営業部門を統括する福島豪専務だけでなく、会社全体でも根付いた意識に違いない。省エネを強みとした主力の冷凍冷蔵機器に加え、新規事業のエンジニアリング部門がこの数字を現実なものに近づけている。
福島専務、主力の業務用冷蔵庫とともに
同社は店舗や厨房の業務用冷凍・冷蔵庫やショーケースなど食品の“川下”系設備で長い歴史を持つが、近年、事業の領域を広げている。
大型の冷凍・冷蔵倉庫や物流センターの施工などエンジニアリングを専門とする事業部の立ち上げ、�盒狭�業や省研というエンジニアリングに強い会社のグループ化、食品工場や冷凍・冷蔵倉庫向けのパネルを扱う専門会社「ＦＳＰ」の発足など“川上”系設備でも提案力を強化した。
加えて、生産者の６次産業化を支援する部門を立ち上げ、新たなユーザーの獲得に乗り出している。
ＦＳＰが連結に加わった14年３月期の売上高は620億円。今期も堅調に推移している。
同社がエンジニアリング事業を意識し始めたのはおよそ10年前。当時は製造現場よりも、倉庫のような食品を保管する機能からスタートさせた。
庫内にクーラーを付け、冷却し、メンテナンスを行う小中規模の冷凍・冷蔵倉庫。これならば、同社が得意とするショーケースの延長上にある。徐々に実績を積み上げ、「これはいける」と判断。その後、この事業に本格的な投資を始める。その判断は正しかったようだ。
10年ほど前と言えば、同社の年商はおよそ300億円。現在、その数字は２倍にも達している。
「エンジニアリング事業のポテンシャルは非常に高いですね。いろいろな現場を回り、ユーザーから求められているのだなと実感しています。業績も着実に上がっています」と福島専務。急拡大はなるべく避ける、と気を引き締めながらも、その先には年商1000億円という大台も視野に入れている。
福島専務が入社したのも、10年前だった。「学生の頃は当社に入社する気持ちはありませんでした。むしろ避けていたと言ってもいいでしょう」。大学院の修士課程を経て、食品業界や厨房業界とは全く違う道へと進んだ。
しかし、社会人になって考えが変わった。仕事の中で多くの人と出会い、見聞きし、会社を経営することの大変さを感じるようになった。何より、今の自分を変えなければならないと思った。「フクシマに戻ろう」。27歳のときの決断だった。
「もともと営業を希望していました」。大阪本社の営業マンとしてスタート。関西圏のコンビニエンスストアや小型スーパー向けのショーケースの販売を担当した。入社３年目で「新規開拓」の担当となった。
東京支社から戻ってきた“新規開拓の鬼”を上司に、新入社員を加えて３人体制でこの仕事を担当した。「ショーケースが当社の主力だが、業界でのシェアは当時15％ほど。まだまだ認知度も低かったですね」と振り返る。話を聞いてもらえず、初めから断られることも多かった。「特に地方のスーパーには販路が弱く、営業は行き届いていませんでした」。
しかし、その状況も次第に好転するようになった。
省エネ機器、入れ替え需要に応える
決め手となったのは“省エネ”だった。この期間、冷凍冷蔵設備の省エネに関する仕組みやソフト、通信システムなど、積み重ねてきた実績が実を結んだ10年でもあった。「ユーザーの省エネ設備への入れ替え需要に応えることができました。自信を得た全国の営業マンが“これはいけるぞ”と今まで行き届かなかった地域でも一斉に販売しました。この時期の新規ユーザーの伸び率はかなりのものがありました」。
その集大成が「2013年度省エネ大賞」のビジネスモデル部門で経済産業大臣賞を受賞したことだろう。
スーパーマーケットなど店舗の冷凍冷蔵設備の更新とエネルギー管理システムの導入を支援するＥＳＣＯ事業で、冷凍冷蔵設備メーカーである同社が新たなビジネスモデルを構築した。店舗側の初期投資がなく、削減できた光熱費で、導入した高効率の冷凍冷蔵設備やエネルギー管理システムなどの費用を賄うことができる。
また、エネルギー管理センターと顧客店舗をネットワークでつなぎ、店舗のエネルギー使用状況の把握と遠隔監視、店舗の状況に合わせた省エネチューニング、コンサルティングなどを行う。このビジネスモデルの導入事例では、ピーク電力33％、消費電力量30％の削減を達成している。
念願のサービスセンター設立
2015年はサービス事業をよりテコ入れする。ユーザーに対して製品だけを売るのではなく、技術とアフターサービスの三位一体型で対応する。そのため人材の層を厚くしており、2014年は74人の新入社員が入社した。人材がいるからこそ、よりよい技術やサービスが生まれる。
2014年は念願だったサービスセンターを大阪に立ち上げた。これで24時間365日、ある程度広域エリアまでサービスマンが対応できる。今年は関東にもサービスセンターを設立する。
この２つのサービスセンター、まずはユーザーの問い合わせに対応する“受け”の拠点だが、「将来的には“攻め”の拠点にします。競合とは違う“フクシマ”だからこそできるサービスをここから発信していきます。そこにビジネスチャンスが生まれるのですから」と期待を込めている。