食品廃棄物を有効活用 高水準の技術で再生可能な資源に

 工場で食品を製造する過程で廃棄物や副産物は避けて通れない。環境対策を無視した企業活動は存続しないことは、業界はもちろん、消費者にも共通意識となった。食は日常生活と直結する分野だけにメーカーの環境対策が問われている。そこでメーカーは食品廃棄物を有効活用して新たな燃料、エネルギーを産出するようになってきた。各社とも工夫をこらした方策を講じ、技術を投じている。

 ニチレイフーズは工場で生産する中で「商品にならなかった食材」のうち、品質的に問題のないものを発酵飼料、肥料としてリサイクルしている。千葉県の船橋工場と宮城県の白石工場に1日1t処理できる機械を設置している。また、揚げ物などをしたあとの食用油をボイラ燃料として再利用。食用油は大豆や菜種を原料としており、石油などの化石燃料の使用をその分削減して、CO2の排出を抑える。

 キユーピーはマヨネーズの原料である「卵」で環境対策を講じている。「卵には無駄になるところがない」というように、年間2万3000t(約40億個分)発生する殻も、すべて無駄にすることなく有効活用している。卵殻膜を除去した卵殻粉は多孔質な構造になっているため、消化吸収にすぐれたカルシウム補給源となる。育児食や介護食に使用するほか、ソーセージやかまぼこなどの物性改良素材としても使用する。
 また、乾燥した卵殻粉はカルシウムが吸収されやすく、作物に必要な微量要素を含むため、肥料として使われている。最近は土壌改良のほか、学校などでフィールドラインにも使われている。黒板に板書する時の白墨(チョーク)にも卵の殻が使われている。

 ハウス食品はデリカシェフ上尾工場で惣菜類を生産する過程で1.5〜2t/日の食物残さが発生しているが、2004年以降さまざまな減容化の検討を行なっている。05年にはバイオ減容機を導入すると共に、野菜中心の残さであることに着目。独自の処理方法・装置に着手した。テストを重ねた結果、07年度に完成し99%近くの減容に成功。08年度は500t以上の残さを処理できた。
 この実績を踏まえ、自社開発した処理技術について08年5月に特許出願している。

 キッコーマングループは食品リサイクル法上の再生利用法優先順位に従い、しょうゆ粕、リンゴ・トマト搾汁粕、おからなどの副産物を飼料に再生利用を強化している。この活動を管理するため、グループ内9社は食品リサイクル法にもとづく再生利用などの実施率を算出している。08年度の再生利用等実施率は94.8%となり、食品リサイクル法で定めている食品製造業の目標値85%を上回った。
 野田工場と高砂工場、北海道キッコーマンから排出されるしょうゆ粕の100%飼料化を達成した。これまで各工場で進めてきた充てん用装置の本格稼働、販路拡大の対応策が実ったという。同時に、これまでの乳牛対象から肉牛や豚にまで用途が広がったことなど、利用する側のメリットも拡大した結果と同社では分析している。

 地球温暖化対策のために、クリーンなバイオマスエネルギーの需要も世界的に高まっている。サッポログループは長年のビール造りによって培われた発酵技術を応用し、食品の製造工程で発生する「オカラ」、「製パン廃棄物」や、食用に用いられずに廃棄される「稲わら」、「麦わら」を原料としたバイオマスエネルギーの生成に取り組んでいる。
 小規模で安価なバイオエタノール製造装置の開発に取り組み、オカラ処理会社の静岡油化工業向けに「オカラ」と「じゃがいもの皮」からエタノールを生成する小型装置を提案、サッポロエンジニアリングが08年に製作、納入した。
 製パン工場向けには、広島大学と共同で水素発酵プラントを設置、稼働させた。この装置は廃棄物1kgから200ℓという高効率で水素が発生する。不純物も極めて少なく、燃料電池に利用可能。発酵後の処理液はメタン発酵して、メタンガスをボイラ燃料として活用できる。