野口正見の「5S活動による食品工場改善」 −33−
在庫管理と5S

 商品、原材料、包装資材の在庫を保管する倉庫は10箇所ほどあり、しかも冷凍・冷蔵・常温の各温度帯に分かれていた。さらに外部預けの在庫も存在した。5S活動の構築のため倉庫も視察すると、生産現場と同じく5Sは実施されておらず、四隅には半端な在庫、奥にはホコリをかぶった在庫、中には崩れかけた在庫の山もあった。
 当然掃除はされてなく、整頓も出来ていなかった。管理不在は明らかで、不良在庫、過剰在庫が存在すると推測された。

 このような状態では月末、期末の棚卸で正確に在庫調査はできない。そこで、5Sの手法により、まず整理を行った。
 キャンセルやアイテムカット、過剰な商品在庫、そのため使えなくなった原材料、包装資材、賞味期限切れの商品、副原料などの在庫を分別し、駐車場に積み上げた。これらは社長の承認を得て、廃棄処分とした。
 大量に廃棄する在庫を目の当たりにして、従業員は「もったいなさ」に愕然としていた。経営陣、役職者は在庫管理の大切さを理解した。
 次は整頓である。倉庫は広くなり、在庫の種類ごとに整然と保管され、品名の表示もされ、数量の掌握も非常にやりやすくなった。掃除も実施され、清潔になった。
 在庫調査委員会を組織し、生産部長を委員長にして、月次の棚卸を確実にし、倉庫の5Sを定着させた。廃棄すべき在庫の損害金額を算出させムダ削減の指標とし、月中には賞味期限が迫った在庫を関係部署(営業部門、仕入れ部門等)に連絡し、ムダの発生を排除する管理を定着させた。

乱雑していた倉庫内を(左)、整理した(右)

 その結果、月次の在庫金額が正確になり、業績数字の信頼感が担保された。遊休の機器類も使用の見通しを検討し、廃棄、売却、要保管に分類し整理、整頓し、固定資産台帳を整備した。

 不良在庫も資産として計上されるので、不良在庫は利益の一部を構成する。税金として資金が社外に流出する。従って早く引き落とした方がよい。

駐車場に不良在庫を集めた