大量生産と“バッチ型”ラインを併用
グループの味の“決め手”を担う重要な役割認識
ニチレイフーズ 長崎工場 大畑健一工場長

 ニチレイフーズ長崎工場の大畑健一工場長に同工場の運営方針、改善の取り組みと成果、今後の課題などについて語ってもらった。大畑氏は営業畑の出身。市販用冷食の営業現場が長い。

     大畑工場長

 ――ニチレイフーズにおける長崎工場の位置づけは?
 大畑 ニチレイフーズには直営工場、出資工場、協力工場などがあるが、長崎工場は直営工場の1つ。市販用で人気の「パリパリの春巻」や「えびチリくん」などの調理冷凍食品のほかに、ブイヨン、スープなどを手掛けているのが特徴。ブイヨン、スープ類はホテル・レストランなどに加え、グループの直営、協力工場など11工場にも供給している。えびピラフに使われるアメリケーヌソースのベースは長崎工場から供給している。ニチレイグループの“味の決め手”を取り扱っているという自負を持っている。
 また、安心安全を特に強く求める学校給食ユーザーからカレーのソースベースやスープベースなどの需要も増えている。これも原料からの安心品質管理ができる当社ならではの取り組みであり、長崎工場だからできる対応。

 ――長崎工場の歴史は?
 大畑 前身は1949年(昭和24年)に設立された長崎洋行、米国向けにみかん缶詰を手掛けていた。1971年(昭和46年)に現在地の大村市に移転。1980年(昭和55年)からブイヨンの生産を開始し、翌81年(昭和56年)からコンソメも始めた。2003年(平成15年)にマンヨー食品からかき揚げラインを移設し、2006年(平成18年)には博多工場の生産品目とデザートが加わり、白石工場からはえびチリラインが移設された。現在は市販用「パリパリの春巻」と業務用デザートで生産量の54%を占める。

 ――品質管理について。
 大畑 品質管理は原材料からの徹底管理を基本にしている。本社との連携により、各工場共通の原材料等は原料仕入先から規格証明書を取り寄せ、さらに工場診断シートに基づき、原材料メーカーの工場で細かな項目までチェックする。評価は数値化され、ニチレイFの考えと乖離があれば原材料メーカーとそのギャップを議論し、問題点を埋める。ニチレイFのスペックに基づいているかどうかを、調達当初は全量選別でチェックを重ねる。
 ニチレイフレッシュ(水畜産原料)とニチレイフーズの農産グループからも氏素性の明確な原料を調達する。これができるのがニチレイフーズグループの強み、現場にとってもありがたい。

 また、当工場の特徴であるブイヨン、スープ、ソースはホテルレベルの品質の高さに加え、安心安全の取り組みも高く評価されている。原料から製造過程、出荷までのトレース情報を管理しているため、特に安心安全を求める学校給食からはO157以降、利用が増えた。カレーソースやスープのベース等に利用されている。
 学校給食向け“安心逸品”シリーズのチキンブイヨン、ビーフコンソメなどに加え、「安心逸品ぶどうゼリー」、「安心逸品アセロラゼリーFe」なども当工場で生産している。
 ブイヨンの需要を拡大するため、工場独自にメニュー開発と利用提案も進めている。例えばブイヨンにドレッシングを加えてジュレ状に固めた新タイプのドレッシングは見た目も美しいサラダメニューになる。

無理に生産量は追わない

 ――工場運営の基本的な考えは?
 大畑 長崎工場は「パリパリの春巻」などの調理冷食の大量生産機能と、ブイヨン・スープ等のバッチ式生産機能を併せ持つのが特徴。生産アイテムは83品だが、春巻とえびチリに代表される大量生産型の市販用が8品。ほかにかき揚げ、給食用デザートなどの業務用がある。かき揚げは惣菜売場、高速道パーキングエリアのフードコート、外食店などの需要がある。大手生協では定番の扱いをいただいている。品質にブレがない点が評価されている。特に年末の需要は一気に拡大する。
 しかし「無理に生産しない」という本社生産本部の方針に沿い、無理に生産量を追うことはしない。

 ――生産実績と今期の計画は?
 大畑 工場の生産量は日産45t、月間1000t。
 昨年は8161tで46億6000万円の生産実績。春巻(構成比30%)とえびチリ(同8%)の市販用主力2品で全体の38%。また春巻とデザート(同24%)、かき揚げ(同18%)の生産上位3カテゴリーで長崎工場全体の72%を占める。
 今期は6809t(17%減)、41億7700万円(10%減)の計画であり、生産数量、金額ともに前期を下回る予算としている。これはレトルトのコーンポタージュラインを山形工場に移設し、今期はそれがなくなる影響も予算に反映しているが、無理に生産することによる様々な問題を避ける意味が大きい。
 見込んだ生産力を超えた受注をすれば、原料調達から人員配置、生産計画まで無理を重ね、生産ミスも増えて廃棄ロスが増える。それは品質にも影響し、原料を無駄にし、決してコストダウンにはつながらない。当工場は操業を平準化し、ていねいなモノづくりで安全安心できる、高品質で、高付加価値商品を生み出したい。

 ――フードディフェンスの取り組みは?
 大畑 長崎工場ではニチレイフーズ全社の方針に従ってフードディフェンスの取り組みも始めた。全役職員、パートを含む全従業員がICタグを持ち、入退室を管理している。
 仮にICタグを持たない外部者が工場出入り口に近づくとアラームが鳴り、事務所に警報される。まだ実験段階だが、いずれは入退室データをパソコン管理することも考えたい。
 このほかに、内部コミュニケーションを良くし、現場で議論を重ねるため、品質保証委員会、安全衛生委員会、省エネ委員会、原材料分科会……など様々な委員会活動を毎月1回以上実施し、その効果を検証して次の改善に生かしている。

 ――「やるばいプロジェクト」、「誰でも水切り」などユニークな活動が目立つ。
 大畑 私自身、営業出身で生産現場の経験がない。しかし生産現場の素人だから、逆に見える部分もある。現場の隅々まで、わかりやすく浸透させるために、いろんなアイデアを投入している。営業マンの発想だと周囲からは指摘されているが。