コラム『ひろい書き』
売れ筋にも“敢えて”手を加える

 セブン−イレブン・ジャパンはこの秋、「セブンカフェ」をリニューアルする。コーヒー豆の渋皮を除去する独自の“磨き工程”を導入することで、雑味がなく、後味のすっきりとしたコーヒーを実現した。おいしさを追求するため、また競合店の追随を許さないため、“敢えて”売れ筋の商品にも手を加えるセブンの姿勢に記者は奮えた。

 チルド弁当や低温長時間発酵による“金の食パン”など、セブンは販売好調な商品を連発している。セブンカフェもその1つだろう。好調を維持するため、いかにしてこの状態を保つか――多くの企業はそう考えるに違いない。しかし、同社は違った。現状維持に満足せず、技術をより高める商品開発に挑む。

 以前参加した調味料メーカーのセミナーで、フードコーディネーターのおおやかずこ氏が話した言葉を思い出さずにはいられなかった。
 おおや氏は食品メーカーにとって、自社の「定番商品」は一番手を加えたくない「守りの商品」になりがちだと指摘。売れ筋であるがゆえに現状維持に囚われる。しかし、それは「作り手・売り手の論理であって、消費者には通用しない」と説明した。「そうこうしている間にも他社は新しい商品を投入し、消費者も貪欲に新商品を意識しており、定番商品は簡単に霞んでしまう」とし、消費者中心の商品開発を訴求。定番商品に手を加える姿勢が必要だと参加者に助言していた。

 絶えず商品に手を加えていく姿勢――。新商品の開発には新技術が欠かせない。新技術となれば、食品機械メーカー、包装機械メーカー、食品エンジニアリング・プラントメーカーも黙ってはいられないはず。業界を取材している記者にとっても、胸が高まる瞬間だ。