マルちゃん正麺に“カップ”タイプ、新製法、開発に4年

 東洋水産は袋麺のヒット商品「マルちゃん正麺」のカップタイプを5日から発売した。袋麺で実現した“生麺のような麺”をカップ麺で「4年かけて新たに開発した」(同社)。「生麺ゆでてうまいまま製法」を起用した。袋タイプとは異なる特許技術を前面に、カップ麺市場にも革新を起こす。

「マルちゃん正麺 カップ」3種を披露する沖常務

 製造工程のポイントは①乾燥前に蒸す代わりにゆでる、②乾燥技術の高度化、③麺に微粒子を配合して多孔質化――の3点。
 既存の即席麺は工場で麺を「蒸す」ことでアルファ化を行っているが、「マルちゃん正麺 袋麺」ではゆでたてのおいしい状態を喫食者に提供するため、食べる直前でアルファ化が起こるように設計している。しかし、「カップ」では湯をそそぐだけで生麺に近いおいしいラーメンに完成させなければならないため、工場でアルファ化する必要がある。開発の過程で麺を「蒸す」よりも「ゆでる」ほうがおいしくなると判断。ゆでることでアルファ化することにした。
 ところが、蒸すではなく、ゆでる製法を採用したことで新たな課題が生じた。
 麺をゆでることで、その水分値は約65%まで上がってしまう。一般的に即席麺の場合は長期保存のため、乾燥させて水分値を10%ほどまで下げる必要があり、乾燥時間が長くなってしまう。この時間をいかに短くするか、乾燥工程を大きく見直す必要があった。
 乾燥技術の高度化を進める過程で、乾燥で発泡し、麺に大きく気泡ができるという課題が残った。そこで、麺に分散した細かい穴(多孔質)を作ることで発泡を防ぐことにした。
 麺に細かい穴を作るにはマイクロサイズの「微粒子」を配合する必要がある。目標とする麺質にするため、その素材を探索し、今回の麺に配合し応用した。これにより、「微粒子」自体が直接水を含んだ微粒子となるため、熱の通りが良く、湯を入れて短時間でおいしい麺に戻すことが可能となった。また、細かい穴に微粒子が被覆するため、伸びにくい麺ができた。

 30日の商品発表会で沖斉常務は「当社の技術を結集させ、新規の製造ラインを設置した」と説明。「生麺に近い食感を実現しており、スープ、具材とも非常に満足度の高い仕上がり。カップ麺に対する消費者の意識を変え、夕食など新たな食シーンを開拓したい」と語った。
 シリーズは「マルちゃん正麺 カップ 芳醇こく醤油」、「同 香味まろ味噌」を全国で、「同 濃厚とろ豚骨」を関西以西で発売する。ともに205円(税抜)。