じゃがいも残さで養豚飼料、下妻工場に装置導入

 カルビーはじゃがいもの残さを養豚飼料に再資源化し、工場の廃棄物処理費の低減につなげた。「じゃがりこ」を製造する下妻工場(茨城県下妻市)に飼料の製造装置を設置し、コスト削減と環境負荷低減を両立させている。

 下妻工場は1975年に操業を開始。95年から「じゃがりこ」の生産工場として稼働している。カルビーで初めてISO14001認証を取得し、現在も徹底した品質管理やリサイクル活動を行なっている。
 じゃがりこを製造する過程でじゃがいもの皮や不良品など、月間約90tほどが食品残さとなるという。工場側はこの食品残さを何か手立てを加えたいと考えていたが、そこで後押しとなったのが「いばらき地域グリーンプロジェクト」だった。
 プロジェクトは2009年に発足。「技術実証」の協議会として位置づけ、茨城地域に潜在する食品資源の有効活用を推進している。同工場のほか、干しいもを生産する会社も参加し、畜産事業者や研究機関が連携。茨城県内の企業や団体、農家が食品リサイクルに向けて盛り上がり、食品残さを活用したエコフィードを推進、国産飼料を増産するとともに輸入濃厚飼料の原料に代替するものとして取り組んでいる。
 茨城県では干しいも残さの飼料化が先行していたが、「じゃがいもでも飼料化できないか」と声があがり、プロジェクトメンバーの一員となった。

「仕組み」整えば、他の工場でも

下妻工場が導入した飼料製造装置

 導入した飼料化装置の処理能力は1時間あたり最大500kg。じゃがいもの皮や選別工程で廃棄にまわるじゃがいもなどを破砕。酵素と腐らせないための安定剤を投入して、熱を加えながら撹拌する。出来上がった飼料原料を養豚牧場に運び、現地で配合飼料を混ぜ、豚の餌となる。
 飼料に再資源化することで、工場の廃棄物処理費が3分の1以下になるという。これに加え、グループのカルビーポテト(北海道帯広市)がじゃがいもの品種改善の研究を契約農家と進めており、以前に比べ廃棄物の全体量を着実に低減させている。
 飼料化は養豚業者にとっても明るい話題となる。近年、輸入飼料が高くなっており、中小規模の養豚業者では餌代の確保に苦汁をなめる日々が続いている。そこで食品残さを活かした良質の国産飼料が増産できれば、輸入飼料に頼らなくて済む。

 食品残さを「出す」こととなる食品メーカーにとっても、それを「使う」養豚業者にとっても歓迎される飼料化だが、それがうまく働くのには「新しい仕組み」の構築が必要だという。
 「食品残さを飼料化する技術はできている。それをプロジェクトとしてどう起動させるかがカギ。下妻工場が参加した茨城県は産官学のスクラムがしっかりしている」(同社生産本部環境対策部)と指摘。他の自治体はこうした産官学の協働はまだ成熟していない。
 茨城県での活動が成功事例の手本となり、全国でも活動が盛り上がることになれば、食品企業や農家、畜産農家、研究機関、行政が強固なスクラムを組み、長期的な視野での経営安定化と、穀類価格や貿易交渉に影響されない飼料基盤の構築に関係者の期待が高まっている。
 「循環型の和の一員となり、それが成果となり手応えを感じている。他の地域でも産官学の仕組みが整えば、横展開を進めていきたい」(同)としている。