東南アジア中心に海外展開を広げる
味の素物流 代表取締役社長 田中 宏幸氏

 味の素物流のタイ現地法人、味の素物流タイランドはカンボジア支店を10月設立する。カンボジア味の素の荷物を基点に、日系GMSの仕事などを手掛ける。味の素物流は海外にロサンゼルス事務所と現地法人の味の素物流タイランドがある。味の素物流の海外売上高は現在約30億円。田中社長は「5年後に海外売上高100億円が目標」と掲げている。

       田中社長

 ――社名から、味の素への依存度が高い?
 田中 実際のところ味の素本体18%、味の素グループ各社を含め45%です。親会社から預けていただける荷はまだたくさんあると考えています。味の素の事業の広がりに、我々が努力してついていきます。

 ――海外でも味の素物流は幅広く事業展開している。
 田中 海外にはロサンゼルス事務所と現地法人として味の素物流タイランドがあり、タイに4拠点。いずれも常温倉庫です。味の素の商品構成比が約8割を占め、タイ国内向けです。また、味の素グループがタイで製造した冷凍食品を日本に輸出する一貫物流は、当社が一部関わっています。タイに冷凍食品保管拠点はありません。

 ――味の素タイランドは地場に根付いている?
 田中 はい。タイの販売方式はキャッシュオンデリバリーです。つまり、市場に商品を運んで売り、お金をもらってくるスタイル。市場内に物流基地があり、セールスが曳き売りしています。その基地へ工場から常温商品を運ぶのが味の素物流タイランドの役割です。今やタイにもモダントレードができて、日系GMSに直送を行う仕事もあります。

 ――今後の海外展開は。
 田中 5年後に海外売上高100億円が目標です。現在は30億円程度。今年10月には味の素物流タイランドのカンボジア支店を立ち上げます。カンボジア味の素の荷物を基点に、日系GMSの仕事など様々なことを手掛ける予定です。

デスクワーク担当者も配送担える体制に

 ――前期から今期にかけて、国内の事業環境は。
 田中 ドライバー不足による傭車の値上がりで、厳しいですね。長距離輸輸送規制対応によるドライバーの複数人乗務体制や中継基地の設定などもコスト高の要因です。燃料高騰の影響もあります。値上げを荷主に要請するものの、応諾いただけても時期がズレ込みます。今は端境期と言えます。

 ――人手不足の問題は。
 田中 一般の方が想像する以上に大きな問題です。ドライバー不足に対応した運び方を考えなければなりません。船舶や鉄道の活用がひとつの方法ですが、これらの手段はトラックのように融通が利きません。食品メーカーは受発注のタイミングなどを見直す必要があると思います。陸運についてもメーカーの枠を超えた取り組みを進める必要があるでしょう。現状は各社垂直に物流ネットワークを組み、最終納品先で一緒になるという形です。ドライバー不足が深刻化しているので、現状を改め、便数をまとめ上げることが理想的。メーカーの枠を超えた改善が必要です。

 ――共配を進めるということ?
 田中 冷凍食品の場合、メーカー数が限られますから比較的良いのですが、常温はメーカー数がかなりあるため、単にスケールメリットを追う共配だけでなく、メーカーから最終納品先までの物流ルートを整理し、「製」・「配」・「販」のつなぎに存在する問題を解決し、輸送手段の合理性を高め、乗務員の働き方を変える“新しい共配事業”の必要性を強く感じます。卸店の時間指定もトラック台数を増やすことにつながり、問題です。製配販の枠を超えた合理化を切望します。商流と物流を分けて考え、物流の最適化を図る必要がある。商物分離の精神で社会的合理性を追求すべきです。

 ――3PLでは対応できないのか。
 田中 3PLは現場に働き手が十分いた時代のビジネスモデル。しかしいま、自社で運送せず、企画だけして指示しても、トラックは中々来ません。当社は現場を持っており、それが特長です。デスクワーク担当者にも大型免許を取得させ、ドライバーが足りない場合は、自ら配送を担う体制を拡充しています。(次号へ続く)