加工食品の産地表示拡大、業界は負担増を懸念し反発
農林水産省と消費者庁は加工食品の原料原産地の表示義務を大幅に広げることを検討する４回目の有識者会議を東京都内で４月27日開き、メーカー側からヒアリングを行った。環太平洋経済連携協定（TPP）で関税が撤廃されれば、輸入品が一段と増える可能性があり、消費者が商品を選びやすい環境を整えるのがねらい。
有識者会議で食品業者からヒアリングした
会合に出席した日本冷凍食品協会の尾辻昭秀常務理事は「全ての加工食品の全ての原材料を全ての事業者に義務化するのは極めて困難」との見解を述べ、特に中小事業者への負担増に懸念を示した。
製粉協会の滝原賢二理事は「品質安定化のため、複数国の小麦を配合して製粉している。原料原産地を変更することも頻繁にある。表示の正確性の点で義務化は適切でない」と主張した。
日本ハムの内藤光弘品質保証部マネージャーは、原産地表示をすれば�．瀬ぅ譽�トに受ける相場変動の影響�▲僖奪院璽犬寮擇蟯垢�費用の増加��産地区分けの管理費用の発生――でコストがアップし、「価格に転嫁せざるを得ない」と説明。さらに「TPPで安い海外食品が日本に流入すれば、（表示義務化による負担増が）国産商品の競争力を低下させる」と発言。その上で「国産、外国産」などにとどめる柔軟な原産地表示を提言した。
主婦連合会の佐野真理子参与は「加工食品では現在、22の食品群とウナギ加工品など４品目が表示義務対象になっているが、あまりに複雑で分かりにくい」と指摘した。その例として「フライ種として衣をつけた食肉・魚介類は表示義務対象なのに、加熱調理したものと調理冷凍食品は対象外」であることなどを挙げた。現行では、原則として１つの工程を加えただけの食品が原産地表示の対象となっている。
現行の制度では生鮮品には原産地の表示義務があるが、加工品の多くは詳しく記載しなくてもよい場合が多い。ただ表示拡大について、業務負担が増える食品・流通業者の慎重論は根強い。
次回の会合で、これまでの論点を整理する。ほぼ全ての加工食品に原料原産地の表示義務がある韓国の制度も参考にするという。
加工食品の原料原産地の表示義務拡大をめぐっては、自民党の農林水産業骨太方針策定プロジェクトチーム（小泉進次郎委員長）が全ての加工食品について原料の産地を表示するよう政府に求める方針を決めており、食品業界には不安材料。