もっと顧客の声に敏感に
宝幸 代表取締役社長 石井良彦氏

 取締役執行役員ロルフ事業部長から4月1日付で現職に就いたばかり。宝幸70年の歴史の中で、生え抜き社長として社内外から注目を集める。「社長業は体力がないと務まりません」とエネルギッシュに飛び回る。

体力に自信、就任直後からフル稼働

      石井社長

 ――社長に就任したばかりだが、挨拶回りは一段落した?
 石井 まだ続きます。顧客や仕入先はもちろん、自社の支社、支店、工場も回るつもり。ひとつひとつの事業規模はさほど大きくないが、チーズ、缶詰、冷凍食品、フリーズドライ、水産と事業領域が広く、ご挨拶すべき関係者は大勢います。
 ――39年ぶりの宝幸生え抜き社長、心境は?
 石井 事前に内示があり、「覚悟しておくように」と伝えられ、まさか自分が、と驚きました。1984年に入社し缶詰の営業からスタート、後に水産に移り北米を担当。水産物の買い付けのためアラスカ、カナダへの長期出張が続きました。再び缶詰に戻り、日本ハムグループ入りした2003年からチーズを担当してきました。
 ――なぜ水産会社に?
 石井 海外で活躍できる仕事がしたかったので、商社や水産会社に憧れました。縁あって宝幸水産(当時)に入社。実質的な創業者の第3代深尾清吉社長以後、4〜7代社長は銀行から、2003年に日本ハムグループ入りしてからは小林浩、末澤壽一、三輪孝之と3代続いて日本ハムから社長が就き、私は第11代。
 ――手腕が評価された。
 石井 当社のチーズ事業は業務用に特化した形で留型商材が多く、開発と工場の連携が強み。4、5年前からは市販用チーズも出し、市場を拡大してきました。顧客の声に敏感に動く会社であり続けるためにも、さらに営業力を強化する。乳製品が難しいのは、原料価格が高騰し、値上げするとユーザーの消費が落ちること。それでもチーズはまだまだ伸ばせます。
 ――缶詰も好調だ。
 石井 過去4〜5年はチーズ事業で利益をあげてきましたが、昨年は缶詰も利益に貢献しました。前3月期の全社売上高は1%増と伸び率こそ低いが、安定成長しています。今期の目標は約600億円。『チェンジ&チャレンジ』精神で臨み、20年に1000億円達成をめざします。