旧工場で現場が悩まされたのはフライヤーの設置場所の汚れと高い室温であった。狭いスペースにフライヤー５基が設置され、極めて作業がしにくい工程であった。
したがって、食用油のこぼれ、揚げカスの落下、掃除が難しいなどのため、床はすぐ腐食し、修復を繰り返す状態。壁、天井は老朽化した設備で、しかも油のミストで汚れが落ちない状態だった。
そのため、５Ｓ活動では常にマイナスの評価となった。新工場建設に当たりこの工程はパネルで囲むこととし、床、壁、天井はすべてステンレスの薄板を張り付ける工法とした。
悩みは床が滑る事であった。スノコを敷いたり、種々の材質を試してはみたが、敷物そのものが滑って動いてしまい失敗した。しかし、ステンレスは本来滑らないはず、とベテランの担当部長が意見を出し、床に油や水がこぼれるから滑るのだと気がついた。
そこでフライヤーの入り口、出口のつなぎ目から揚げ油がこぼれないように、揚げ滓の回収時、床にこぼさないよう工夫した。入り口、出口、揚げ滓除去のふるい機などへのつなぎ目はその下部に受けのシュートを取り付け、油や粕を容器に回収した。容器はステンレスの縁付き受け皿に置き、搬出の際には受け皿付き台車で運んだ。大事なことはシュートも受け皿も台車も余裕を持って大きめに作る事であった。
その結果、担当者もルールを守る５Ｓの「躾」により、油や揚げカスをこぼさなくなり、見事に滑らなくなった。この経験が床のドライ化の実現につながっていく。揚げ油はボイラで集中加熱し、循環させることによって部屋は高温にならず、油煙も水層を通過させ、排気したので格段に快適な環境となった。