脱炭素時代の食品工場
〜見えない冷熱のムダをなくす��
冷蔵冷凍庫の除湿にもヒートポンプ
前川製作所ソリューション事業本部 江原誠部長
食品工場における省エネ・温暖化ガス削減はどのように実現できるのか。「エネルギー有効利用ソリューション事業」を強化した前川製作所の江原誠ソリューション事業本部長に聞く２回目。
ヒートポンプで電気代８割削減
江原誠部長
前号では結露対策に大きなエネルギーが使われていることを紹介した。特に冷凍冷蔵庫や低温環境の食品工場は湿度が高い場合が多く、天井や段ボール箱に結露が生じやすい。カビの発生や菌の増加にもつながる。冷凍機のクーラーに霜が着けば冷えにくくなり、エネルギーのムダが発生する。
低温環境における除湿には、一般に、乾燥剤に空気中の水分を吸着させるデシカント除湿機が使われている。水分を吸着した乾燥剤はヒーターや蒸気の熱を使って乾かし、再び使用する。つまり、「吸着」と「再生」を繰り返すことで連続的に除湿する。
乾燥剤は水を吸着すると凝縮熱で温度が上昇するため、吸着後の乾燥した空気は空気チラーで冷やす必要がある。つまり、乾燥剤の「再生」のために熱エネルギーを使うと同時に、空気を冷やすためにもエネルギーを使っていた。
ここでもヒートポンプ技術が極めて有効となる。
当社のヒートポンプ方式デシカント除湿機「ｃｈｒｉｓ」（クリス）は、１台で冷却と加熱を同時に行うことができる。乾燥した空気を冷やす際に生じた熱をヒートポンプでかき集め、乾燥剤を乾かす熱源に使う。これにより従来型（一方で冷却し、一方では電気ヒーターで加熱する方式）に比べ約80％の電気代削減を実現する。
クリスは既に80セットほど出荷しており、その56％が大型冷蔵倉庫。荷捌き室で特に多くの導入実績がある。
除湿効果も高く、湿度でモヤがかかっていた荷捌き室の視界がすっきりして「こんなに効果があるのか」と驚かれることもある。ドライフロアーの維持にも良く、食肉工場や食品工場でも導入が増えている。
クリスは＋15〜−５℃の低温環境で省エネ効果が高いが、それより高い温度帯（15℃以上、加工室など）向けの「開発品」もある。機能はクリスとほぼ同じだが、より廉価に仕上げている。
省エネに最適な自然冷媒を選択
冷凍冷蔵倉庫の場合、冷媒にフロンＲ22を使用しているケースがまだ多い。Ｒ22は2019年12月末で実質全廃となった。
代替冷媒の一つフロンＲ404Ａはオゾン層破壊係数が０のため近年冷凍冷蔵倉庫に使われてきたが、政府の温暖化対策で冷媒メーカーにＧＷＰの排出規制をかけたことから生産が急激に縮小し、市場に出回りにくくなっている。しかも、Ｒ404ＡはＲ22と比べＣＯＰ（成績係数）が劣り、冷凍機の動力を余分に必要とする。
一方、ＣＯ２直膨式に多い空冷の小型分散型パッケージ冷凍機は、中規模設備以上になると台数や配管本数と共にメンテが増え、電力消費も高まる。空冷式でデフロストがヒーター式だと、運転時の電気代がアンモニア／ＣＯ２冷凍ユニットに比べ1.5倍になる場合が少なくない。
最適な冷媒の選定は省エネにおいて非常に重要となる。当社のアンモニア／ＣＯ２冷凍ユニット「ＮｅｗＴｏｎ」シリーズは、Ｒ404Ａに比べ消費電力量は約50％削減できる。
２万ｔ級（必要冷凍能力533ＫＷ）の場合、アンモニア／ＣＯ２冷凍ユニットはＣＯ２直膨（空冷・散水なしの場合）と比べ電気代が年間１千万円以上節約できる。（１日17時間稼働、電力単価は15円／ＫＷ時で計算）
「ＮｅｗＴｏｎ」シリーズは昨年末まで累計2128基が導入され、115万ｔのＣＯ２排出削減効果があった。
冷蔵倉庫の省エネは入り口部分の外気の遮断も重要となる。エアシャッターが効果的だが、当社は外気の遮断だけでなく虫の侵入も防ぐ、横吹き式の「バグシャッター」等を開発している。（次号につづく）