カツオタタキの極（きわみ）
市長も絶賛、「指宿山川産」ブランドで
極洋グループ 指宿食品（上）
大手水産会社の極洋（東京・赤坂、多田久樹社長）が、２月の冷凍食品新工場（グループ会社・極洋食品の塩釜工場）の立ち上げに続き、鹿児島県指宿市でも新たな挑戦を開始した。
極洋グループが90％出資して設立した指宿食品（社長＝雲津雅行極洋常務）のカツオタタキの新工場が本格稼働。グループ会社・極洋水産の海外まき網船「わかば丸」が漁獲した原料カツオを、これまでの焼津（静岡県）一極集中から同県の山川港に分散。カツカタタキ製品の加工を内製化することで一貫事業を強化する。地域資源の活用や「指宿山川産カツオタタキ」のブランド化、さらには新たな雇用機会の創出などで、指宿市も全面協力している。
右から極洋の土井秀郎鰹鮪事業部長、
岩崎大焼津営業所副主任、
指宿食品の山��泉一工場長、小宮貴文営業部長
大手水産会社の中で鰹鮪事業に特化している極洋。その最大の強みは、自社グループの極洋水産が５隻の海外まき網船を有し、漁獲から加工、販売までの一貫事業が可能なこと。ただ、これまでカツオタタキに関しては、焼津に水揚げしたカツオ原料を協力工場で加工していた。
しかし今回、指宿市の誘致を受け、昨年７月に山川地区に指宿食品を設立。地元の協栄鰹節加工協同組合から借り受けた土地と建屋を買い取り、全面リニューアル。最新鋭のカツオタタキ生産ラインを導入し、工場を立ち上げた。
世界的にも珍しい砂蒸し風呂や、「日帰り温泉日本一」に輝いた「たまて箱温泉」、薩摩富士と称される開聞岳、幻の恐竜「イッシー」で有名な池田湖など、観光資源には事欠かない指宿だが、その中でも忘れてならないのが「カツオ」。
山川港には年間約４万ｔのカツオが水揚げされる。これまでは協栄鰹節加工協同組合がタタキやロインを生産し、地元のホテル業界などに愛用されていたが、今後は指宿食品がこれを手掛けることになる。
極洋はカツオタタキ製品をこれまで焼津地区の協力工場でのみ生産してきたが、生産拠点が新たに誕生することで、慢性的な供給不足の解消に加え、災害時のリスク分散はもちろん、生産の内製化、さらに九州をはじめとする西日本地区の新たな販路拡大が期待できる。
カツオタタキの盛り付け例
一方、地元の指宿市にとっては、協栄鰹節加工組合がカツオタタキの生産から撤退したため、「指宿山川産カツオタタキ」というかけがえのない地域資源を失うことにもつながりかねない。そこで指宿食品によるカツオタタキ生産に対しては市が地域循環創造事業（交付金の対象）に指定し、全面的なバックアップを表明した。
新工場を視察した指宿市の豊留悦男市長は「製造工程の衛生管理、食品の安全管理が行き届いており、その徹底した取り組みが印象的だった。カツオタタキも試食させてもらったが、さすがは本場の味、旨さは格別。地元の新たな雇用機会の創出や地場産品のブランド化にもつながる取り組み」と指宿食品の今後の事業展開に大きな期待を寄せている。
（次号へつづく）