改善活動と働きやすい環境作り進める
餃子、米飯などコア事業に経営資源を集中
味の素冷凍食品�蝓ー萃�役専務執行役員 生産本部長 福元哲郎氏
2019年６月に味の素冷凍食品の取締役専務執行役員生産本部長に就任した。生産関連部門を管掌すると同時に、「働き方改革」推進室長を兼務する。「生産工場の改善活動と併せて、働きやすい環境づくりがこれからますます重要になる」と語る。
福元専務
――生産本部長として力を入れている仕事について聞きたい。
福元 まず国内７工場すべての従業員が活躍できる環境・職場を作ることです。そのために必要なのが「ＳＫＴ（生産構造転換の略）」と呼ぶ改善活動。これを20年続けて品質レベルの向上、原価低減、人材育成など、人と設備の両面で成果を上げてきましたが、改善活動に終わりはありません。もう１つはパート・派遣従業員が主体の小集団活動。10年前から全工場で展開し、自分たちの職場を、自分たちで良くしてもらっています。
大きな課題があればプロジェクトを立ち上げ、関連部門と連携します。例えば、コアカテゴリーのスイーツは比較的人手がかかるため、新しい製法と生産設備を導入し、2017〜18年で大幅な省人化を実現しました。今、２期目のプロジェクトに取り掛かっています。
国内の技術力で海外をけん引
――海外との連携は？
福元 国内外でともに冷凍食品の売上高が1000億円規模に成長し、特に海外を飛躍的に伸ばしていくのが味の素グループの方針です。そのためには40年間、国内で培ってきた生産技術力や商品開発力、品質管理レベルで海外の事業拡大をけん引していく心構えです。一方で、海外ではＨＡＣＣＰの運用が優れているため、双方の良さを組み合わせるのがベストです。
――「働き方改革」推進室長を兼務している。
福元 実働時間を減らしても生産性を上げることを目的に、全社を挙げて取り組んでいます。生産性向上、省人化につながる改善活動と、「働き方改革」の両方を進めるのが肝要です。従業員にとってより快適で、優しい職場環境を作ることはこれからますます重要になるでしょう。
――どこも人手不足だ。
福元 当社も同じです。時給の見直しや福利厚生の充実でパート従業員の定着率を上げています。技能実習生の活用も欠かせません。
――直近の設備投資は。
福元 「ギョーザ」ラインの新設と、カップ入り米飯の包装ラインに投資しました。
環境面では、フリーザーの脱フロン化を予定通り2020年度中に終了します。
「ギョーザ」の機械化は完成に近い
――機械化はどこまで進められる？
福元 「ギョーザ」の場合、成型から包装まではほぼ完成に近い形で機械化が進んでいます。前処理工程ではまだ人手に頼っている部分があり、機械化の余地はあります。ただしニラのように、機械では選別しにくい原料もあるので簡単ではありません。それでもコアカテゴリーの餃子、米飯はおよそ10年で生産性がかなり上がっています。
――「ギョーザ」に使うキャベツを従業員が素早くカットする映像がテレビ番組で紹介された。
福元 キャベツを長時間カットし続けるのはきつい作業なので、一部で機械を導入しています。芯をくり抜き、カットする工程を一体化した機械を開発しました。
――自社で生産設備の開発を？
福元 スイーツの場合もそうですが、生産設備は独自開発することが多く、購入した場合でもカスタマイズし、そのまま使うことはまずありません。これまでに生産設備に関する特許をいくつも取得しています。
――次期中計（2020〜22年度）ではどのような戦略を。
福元 コアカテゴリーの餃子、米飯、スイーツに経営資源を集中します。もう１つはＩＴシステムへの投資。費用対効果や、どう使うか、といった難しい面もありますが、合理化に向けてこれまで以上に投資する考えです。
――タイにも赴任している。
福元 1998年にタイ味の素ベタグロ冷凍食品に出向しました。日本とは異なる文化、企業運営を肌で感じることができた貴重な体験です。その後、新設した豚肉を加工する味の素ベタグロ・スペシャリティフーズと、リニューアルしたタイ味の素ベタグロ冷凍食品の生産工場の基本設計に携わりました。
（ふくもと・てつろう）1984年４月入社、７月九州工場技術室。98年タイ味の素ベタグロ冷凍食品出向、2002年タイ味の素冷凍食品出向、07年九州工場長、11年執行役員生産戦略部長、13年常務執行役員生産本部副本部長、15年グローバル事業本部長、17年取締役、19年６月から現職。1959年（昭和34年）４月３日鹿児島生まれ、60歳。鹿児島大農学部卒。