標準化したアルミフレームを低コストで
ケイズベルテック 代表取締役 里薗 勝成氏

 食品工場の製造ラインに欠かせないベルトやコンベアシステム。主役ではないが、ベルトの良し悪しが食品機械そのものの良し悪しをも左右しかねない重要な部分。これまで標準化が困難だったアルミフレームのネットコンベアを開発し、ユーザーの目的にあったベルトを低コストで提案するのがコンベアベルト専門メーカー、ケイズベルテックの強み。「ユーザーの要望に応じ、ともに発展する。それが次の提案力に活かせる」と里薗社長は語っている。

      里薗社長

 ――創業以来、ワイヤーコンベアベルトの専門メーカーとして実績を重ねている。
 里薗 小さい製品から大きな製品、軽い製品から重い製品、ウェットやドライ、高温や低温、加熱や冷却用途など搬送物は様々あります。どの用途のベルトでも問い合わせがあれば広く対応しています。

 ――どのようなユーザーと接点が。
 里薗 食品関係では冷凍食品が多く、ハム・ソー、製菓・製パン、水産加工品メーカーとも多く取り引きさせていただいております。ユーザーの製造ラインは様々な装置で構成されています。例えば冷凍食品の場合、成型機、パン粉付け機、フライヤー、フリーザー、包装機、検査装置という構成ですが、それぞれ食品機械メーカーの特性を持った単独の装置が設置されており、それが弊社のコンベアシステムによりつながって一連のラインになります。それぞれの装置の投入・搬出条件に合わせ整列や配列・乗り移りを経て製品化されます。

 ――ベルトはなくてはならない。
 里薗 私たちは各食品機械メーカーと厳密な打ち合わせのもとに、各装置と連結するコンベアのほか、整列・配列・分配・縮小・分散・集合などといった様々な装置の設計・製作をします。そのためベルトを製造するだけでなく、ラインのシステムを熟知していなければならず、システム事業部という専門の事業部を設けています。ベルト製造事業部とシステム事業部、この2本柱でトータル的にユーザーに提案しています。

 ――製造とシステムの両面で相乗効果が。
 里薗 ワイヤーベルトやプラスチックベルトは社内で製造しています。しかし、私たち自身では作れないベルトもあります。そこで強みなのが米国のAshworth社の日本の総代理店を私たちが担当しているということです。Ashworth社はスパイラルフリーザーに張られているベルトの世界トップシェアを誇っており、スパイラルコンベアの機構を最初に考えた会社です。製造開発はもちろん、海外の代理店を担っていることで、私たちは冷凍食品工場で使われているあらゆるベルトを供給していると自負しています。
 また、世界で新たに開発されたベルトなど難しいベルトは、それに対応するシステムを作る人が日本にいません。そこで、ユーザーからはベルトやその周辺のシステムごと相談にのってほしいと要望があり、システム事業部がこれを担当します。

 ――扱っているベルトの種類の多さに脱帽させられる。
 里薗 ネットベルト、ウレタンベルト、モジュールベルトなどのステンレス製のコンベア、カーブベルトコンベア、トンネルフリーザーに配列するシャトルコンベア、拡張(スプレッダー)コンベア、振動コンベアなど、種類は豊富です。

 ――振動コンベアとは?
 里薗 振動コンベアは本来、粉体・粒体関係が主体でしたが、最近ハンバーグの搬送にも採用されてきました。スパイラルフリーザーに投入するときに利用しハンバーグの重なり防止や投入幅の拡張・縮小をします。また、チェッカーに入れるときの減列にも利用できます。従来は手投入で一列投入しなければなりませんでしたが、振動コンベアは製品を一度に入れても必ず一列ずつ出てきます。振動コンベアのこのような利用方法は私たちが先駆けて業界に提案し、以降着実に実績を重ねています。

 ――御社はネットコンベアも強い。
 里薗 アルミフレームのコンベアに関して、ベルトコンベアは安いが、ネットコンベアは高い、というユーザーからの問い合わせがあります。しかし、ベルト自体の価格に大きく差があるわけではありません。完全標準化されたネットコンベアというものがなく、あってもステンレスフレーム。また鉄製フレームにしても一品ものの製造になるのでコストが高くなる、という理屈です。

 ――標準化されたネットコンベアがなかったからなのですね。
 里薗 そこで私たちはアルミフレームでネットコンベアの標準タイプを開発しました。水がかからないところにネットコンベアを使いたいというユーザーは多いです。例えば加熱した製品の搬送には樹脂ベルトは不向きですね。また、エアーブローで水を飛ばすとか放冷するときも開口性の高いベルトが必要です。
 ネットコンベアはウレタンコンベアと比較して選定が難しい。搬送物、搬送重量、搬送速度などそれぞれの条件を加味して仕様を選定しなければなりませんが、安易にはできません。そのため標準化が困難であり、業界では標準規格化した汎用性のあるネットコンベアの誕生が叶わずにきていました。
 本当は開口性の高いベルトが欲しかったが値段が高く、仕方なくウレタンを使っている、というユーザーの声を多く聞きます。アルミフレームの標準コンベアを開発することで値段が安くなり、ユーザーは本来の目的に合ったベルトを選定できるようになりました。選択枝が増えたわけです。大きな開口性率、耐熱、耐薬品など用途は拡大しています。さらにUV照射やシュリンク包装にも適しているため、最近では製薬会社からの引き合いも増えています。

 ――どのベルトコンベアも活躍している。その中でも敢えて売れ筋、主力となっているコンベアは?
 里薗 スタンダードに見えますが「ベルトッチャ」シリーズの人気が根強いですね。“このタイプでないと駄目”と指定してくださる大手のハム・ソーメーカーが増えています。ベルトを脱着する際のベルト緩めは工具を使わず片手操作のワンタッチ、わずらわしいノブを緩めて跳ねあげる操作を不要にしています。ノブは緩めたままだと脱落し異物混入となる可能性が高いこと、作業者による復元性の統一化が困難です。締め忘れ等のトラブルに対してもベルトッチャはその危険性を軽減しています。
 また、脚元においてもゴミ溜まりを少なくするため、全て丸パイプで構成された強固な片持ち脚が標準です。ベルトッチャはすべての構造がシンプルで機能性、操作性、洗浄性、復元性、メンテナンス性、耐久性にプラスし「安心」がこのカタチに凝縮されています。ラインで毎日使うものなので、シンプルな設計がユーザーに親しまれています。

フードエンジニアリングタイムス 2009年12月2日号掲載