新型スライサーに肉の枚数調整機能、内覧会で実演
平井カンパニー 代表取締役 平井智樹氏

 精肉・食品加工機械の専門商社、平井カンパニー(東京都新宿区)は日本キャリア工業(愛媛県松山市)製の新型ベンディングスライサー「AZ-342」の内覧会を同社港北センター(横浜市)で12〜15日開催する。約10年ぶりにフルモデルチェンジし、生産性と作業効率が向上した。中でも重量のばらつきを抑える機能は精肉加工で長年課題だった「手直し」頻度を減らすのに大きく貢献する。平井社長に新機種の特長や導入効果について聞いた。

スライス速度がアップ、生産性を向上

    平井社長

 ――ベンディングスライサー「AtoZ」シリーズの新機種は久しぶりのリリースだ。
 平井 初号機「AZ-340」が発売されたのが約20年前。その後、モーターなど電気系統の部品を刷新して現行の機種「AZ-341」をリリースしたのが10年ほど前です。今回は2回目のモデルチェンジになります。モーターだけでなく、各部の構造や駆動方法、操作パネルなどあらゆる箇所を改良した、いわばフルモデルチェンジ機種です。

 ――どのような特長がある?
 平井 主な特長は2点あります。1つはスライス速度が上がりました。ベンディング(折り曲げ)スライスの場合、1分間当たりのスライス回数が従来の50回から60回に、折り曲げないスライスの場合で60回から70回に上がるなど生産性が最大20%アップしました。
 もう1つの特長は「枚数調整機能」を搭載したことです。これは原料肉の高さを検知し、スライス肉の重量の変化を予測して肉の枚数を自動調整します。

 ――どういうこと?
 平井 「AtoZ」シリーズにはスライスした肉をたとえば10枚重ねた後、少し間隔を空けてまた10枚重ねる「鱗列」(ずらし重ね)機能があります。ただ、原料肉は形状や大きさが一定でないため、スライスした肉1枚の重量がばらつきやすく、10枚ずつ重ねても200gや300gと重量差が発生することがあります。

 スーパーの売場では1パック何グラムと重量の規格を決めて販売しているため、加工現場ではトレーへの盛付けスタッフが規格に合わせてスライス肉を1枚足したり、引いたりして手作業で重量調整を行っています。

重量ばらつきを抑える新機能

 ――スライサーで加工した後に手作業が入るのなら作業効率は上がらない。
 平井 ええ、そこで新機種の「AZ-342」は原料肉の高さを検知し、スライス肉1枚の重量を測ったうえで、重ねる枚数を12枚や13枚に増やしたり、9枚に減らしたりして重量のばらつきを抑えます。原料肉の高さの平均値から統計処理し、コンピュータプログラムで計算して重量枚数の予測値をはじき出しています。

 さらに、スライス肉を重ねたブロックの幅を均一にします。10枚、12枚、9枚でも変わりません。これはスライス肉を1枚、1枚ずらして重ねる際にずらす幅を微妙に広げたり、狭めるなどして全体の幅が変わらないように調整しているためです。

 ――どうしてそのようなことを?
 平井 スーパーの売場ではトレーに盛り付けた時の見映えを重視します。トレーに肉がすき間なく目一杯入っていればボリューム感が増します。ブロックの幅はトレーのサイズに合わせて設定でき、最大32種類のプログラムを登録できます。

肉をスライスして鱗列(ずらし重ね)する様子、内覧会ではデモンストレーションを実施する

 ――枚数調整機能の導入効果は?
平井 枚数調整機能を使い、あらかじめ設定した重量の許容範囲に収まるかどうかを試験したところ、左側のレーンの合格率は83.7%。一方、枚数調整をしない場合の合格率は40.8%にとどまりました。右側のレーンも合格率は70%以上に上ります。

 この結果、左右合わせた盛付けの手直し頻度は51回から22回に大きく減りました。これは機械を止めて作業を行う頻度の減少にもつながるため、スライサーの稼働率を大幅に上げることができます。

 最近は自動盛付け機能を備えたスライサーやロボットと連携させるケースが増えていますが、ボトルネックは重量のばらつき。せっかく自動化しても、重量が規格外であれば手直し作業が必要になります。重量調整だけでなく、見た目を良くするために肉を重ね直すなどの細かい作業も発生します。ロボットを使って自動化するとしても、スライス肉の枚数や重量の調整ができないと活用は難しいでしょう。

上流、下流を含めたライン構築を提案

 ――スーパーなどは内食需要の拡大で業績が好調だが、設備投資は増えそう?
 平井 今回の好業績を一過性とみるスーパーの関係者は多いです。ワクチンによって感染拡大が落ち着いたら通常の水準に戻ると予想しています。工場建設などの大型案件の話は聞こえてきませんし、プロセスセンターの建設も昨年から勢いが見られません。

 そうした中で当社は「食のインフラ」として営業を続けるスーパーを支えるため、メンテナンス体制を充実させるほか、機械を軸に上流から下流までを含めたラインの構築を提案し、生産性向上や自動化、省人化などに貢献していきます。当社は機械専門商社としてあらゆるカテゴリーの機械メーカーと取引きがあり、お客さまの要望にいかようにも対応できます。商流に縛られないことが強みです。

(ひらい・ともき)1973年東京生まれ。成蹊大学経済学部卒業後、東京商工リサーチ入社。営業や企業情報ファイルの商品企画に7年間従事した後、情報システム、化学エンジニアリング商社の三谷産業へ。2007年平井カンパニー入社。営業、財務部門を経て2014年から社長。47歳。
 内覧会では原料肉を使ったデモンストレーションを行う。感染症対策のため完全予約制とし、午前10時と午後1時半の1日2回実施する。予約は下記URLから申し込む。
 https://hiraicompany.jp/news/detail?news_id=2364