新技術はユーザーとの対話の中に
飯田製作所 代表取締役社長 飯田 勉氏(上)

 昨年5月社長になった。創業は大正期、銘菓づくりを長年支えてきた同社は、機械化が難しい技術に果敢に挑戦することで、定番で主力の機械を次々と誕生させた。「新技術のヒントはお客様との対話の中に」と飯田新社長は語る。

       飯田社長

 ――社長1年目の進捗は?
 飯田 この立場となって、前社長は様々な業務に携わっていたのだなと改めて感じています。幸い、会長として健在ですので、いろいろとアドバイスをいただき、助かっています。

 ――どんな会社にしていきたい?
 飯田 前社長はすべてのことを把握しておきたい人。営業、生産、総務など、どの部署のことも細かく気にかけていました。それはもちろん当然なことなのですが、それが行き過ぎてしまうと、社員の自主性を損なうことにも繋がりかねません。強いて言えば、トップに言われてから行動する、という体質が当社にはありました。そこで私は、各部署の自主性をより引き出したいと思っています。すべてのことをトップダウンで指示すると、受けた人は楽でしょうが、その体質からいつまでも抜け出せなくなってしまいます。成長も見込めなくなります。

 ――具体的な改善点は?
 飯田 例えば、社内文書も社長の名前で出すのではなく、各部署の責任者の名前で出してもらいます。自分が関わっているのだ、と意識の上でも、形の上でも根付かせます。こうした社内改善は浸透するのに時間はかかるでしょうが、今から始めなければなりません。

 ――業界、そして御社はどんな1年だった。
 飯田 当社が扱う製菓機械で言えば、コンビニ関連の工場は投資が盛んでしたが、町のお菓子屋さんはやや元気がありませんでした。

 ――昨年は自動ハンドリングとパックインロボットを付与した「串団子自動製造ライン」を発表した。
 飯田 この自動化はコンビニエンス向けの大型工場の方に関心を持っていただきました。まもなく開催するモバックショウでは、団子製造機に、生地を自動で供給できるシステムを出展します。それまで原料の補給は手作業でしたが、そこを自動化できます。この供給箇所の機構はスクリューになっており、多少の時間が経過しても生地が乾くことはありません。開口的ではないので、落下菌が混入する心配もありません。

 ――ユーザーから望まれていた?
 飯田 潜在的な要望が業界にはありました。先日、別の用事で地方からいらしたコンビニ系工場の工場長さんにお話ししたところ、“是非見せてほしい”と言っていただきました。大型の工場では、毎分100〜120本の串団子の製造機が稼働しています。これは2分間に10kgの生地を処理していることになります。つまり、1時間に30回も生地の補給をしなければなりません。それに携わるのは多くが女性のパートなので、生地は重く、かなりの負担となっていました。

 ――それを解消できるシステムはユーザーも重宝するはず。昨年のハンドリング化も含めて、御社は製菓機械にも新しい技術を開発している。元気がある。
 飯田 毎年、同じカタログモデルの機械を売っている方が間違いのない仕事ができるでしょう。納期も読めますし、利益も読めます。しかし、それでは新しい技術への開発スピードが遅れてしまいます。
 望ましいのは、お客様の話に加えさせていただき、そこで相談を受け、お客様の生地を見ながら打ち合わせする――その中から新技術が生まれます。こうしたお客様と接しさせていただくのも、当社から常に新しいものを追求する姿勢を見せていなければなりません。そこに私たち機械メーカーの責任とやりがいがあります。(次号に続く)

 フードエンジニアリングタイムス(FEN)2015年2月4日号掲載