飲食店内の禁煙、都条例が１日全面施行
中小店に危機感も、完全禁煙に移行か
都内のコーヒーショップは飲食が認められる加熱式たば
こ専用の喫煙室を設置した
受動喫煙防止を図る国の「改正健康増進法」が４月１日全面施行された。喫煙を主目的としない飲食店内は原則禁煙となる。国は既存の小規模店に配慮し、経過措置として店内喫煙を一定期間認めるが、同日に全面施行された東京都の「受動喫煙防止条例」は国より厳しく「従業員がいない」ことを店内喫煙の要件に加えており、都内のほとんどの飲食店が規制の対象になる。飲食店は新型コロナ拡大の影響で客数が落ち込んでおり、都内の店主らはこれ以上客足が離れることに危機感を持っている。
帰宅前のサラリーマンらでにぎわう東京神田駅近くの立ち飲み店はこれまでフロア内分煙としてきたが、１日から完全禁煙に切り替える。ふだんは夜７時ともなれば酔客でごった返すが、新型コロナの影響で客足は大きく減っている。同店の店長は「客は愛煙家が多く、完全禁煙でさらに常連客が離れやしないか心配だが、こればかりはしょうがない。常連客にはこの際、禁煙しなさいよと言っているんだが」と苦笑する。
チェーン大手は喫煙専用室など設置
国の「改正健康増進法」では資本金5000万円以下、客席面積100�岼焚爾任△譴弌峇�存特定飲食提供施設」として店内喫煙が認められる。神田駅の立ち飲み店はこれに該当するが、都条例には「従業員がいない」（同居親族を含まない）という独自ルールがあるため、認められない。喫煙が認められるのは店内に喫煙専用室や加熱式たばこ専用の喫煙室を設置した場合に限られる。
国の経過措置で店内喫煙が認められる飲食店は全体の約55％と推計される一方、都条例では80％以上が規制対象になるとみられる。違反した場合は保健所による指導・助言、勧告・公表・命令、立入検査のほか、過料が課されることもある。
コーヒーチェーン大手などは喫煙専用室や、飲食が認められる加熱式たばこ専用の喫煙室を設置しているが、小規模店ではスペースの問題があるうえ、煙の流出防止措置を講じるためのコストもかさむ。また、「従業員がいない」要件を満たしても、保健所に届け出る申請書類が多く、管理する手間がかかる。
このため、「たばこを吸わない客は以前から増えており、完全禁煙にしたほうが手間もコストもかからなくていい」という小規模店の声が少なくない。
新規出店は特例が認められない
今回の改正法、都条例とも店内喫煙を認める特例の要件に「４月１日時点ですでに営業していること」とある。つまり、４月１日以降にオープンした店は、たとえ小規模店でも特例は認められない。飲食店は毎年６万店が閉店する一方で、新規出店は２年間で飲食店全体の２割弱、５年間で３割強とされており、今後は店内禁煙の飲食店が段階的に増えることになる。
ジョンソン・エンド・ジョンソンがこのほど発表したアンケート調査では、喫煙者の７割以上が「肩身が狭い」と感じており、法改正を禁煙のきっかけにしたいと回答した割合は８割を超えた。