冷凍とろろの新工場、北海道で９月稼働
ＪＡと事業化に合意、年間1000ｔへ
(株)ヤマトフーズ 常務取締役 酒井行夫氏
冷凍とろろなど山芋の加工品市場で国内シェアトップの(株)ヤマトフーズ（埼玉県深谷市、中野亘社長）はＪＡ帯広かわにし（北海道帯広市）と冷凍とろろの共同事業を進めており、新工場を今年９月から稼働する。生産量は年間1000ｔ。親会社のマルコーフーズ（株）（同市、村岡守社長）が生産する。ヤマトフーズが販売を担い、業務用外食や一般市販など全国ルートに乗せる。酒井行夫常務取締役に共同事業のねらいを聞いた。
「新工場の目的は安定調達と産地との結び
つき」と語る酒井常務
――帯広の新工場について聞きたい。
酒井 ＪＡ帯広かわにしが土地を用意して工場を建設します。当社が現地法人を立ち上げ、生産技術と人材を提供します。農業振興や地域の雇用創出につながるため、帯広市も協力する広域プロジェクトです。
竣工は今年８月末、稼働は９月を予定しています。延床面積1342�屬療換�２階建て。１階が工場、２階は会議室や事務所です。生産ラインは原料のすりおろしから殺菌、充てん、凍結、梱包までを機械化します。人員は社員とパートで15名ほどを予定しています。
――共同事業の経緯は。
酒井 ＪＡ帯広かわにしは当社の原料調達先です。長芋の生産量日本一で輸出も手がけています。
長芋は青果出荷がメインですが、中にはキズがついたり、折れたり、規格に満たない20�儖焚爾覆廟腸冥于戮�難しいものがあります。これまで農家は青果出荷が難しい長芋は収穫しなかった。収穫コストが見合わないためです。
ただ、そうした長芋も出荷できれば農家の所得は増える。一方で当社も原材料の調達量が増え、安定調達が期待できる。メリットが相互に一致したことで共同事業の合意に至りました。
――新工場の生産量は。
酒井 山芋は大和芋と長芋に大別され、そのうち長芋は主に北海道と青森から、大和芋は主に千葉と群馬から調達しています。
当社は長芋と大和芋を合わせ年間5000ｔを製品化していますが、北海道で加工する長芋は年間1000ｔを新工場で製造し、その他の4000ｔはこれまで通り埼玉工場で製造します。
原料を自社栽培、天候リスク対策
――安定調達と言えば、近年は天候リスクも顕在化し各社を悩ませている。
酒井 一昨年の北海道豪雨災害の時は当社も大きな影響を受けました。毎年のように天候リスクがついて回る。打てる手は打っておく必要があります。実は３年ほど前から自社栽培の耕作地を広げています。
埼玉工場の近隣地で大和芋の栽培に取り組んでいます。農業に従事したいという社員らが畑を耕しています。協力会社に栽培を委託した分と合わせると、耕作地は約50haに広がり、収穫量は年間約1000ｔにまで増えました。自社栽培には原料の安定調達だけでなく、トレーサビリティの確立という目的もあります。
――冷凍とろろ関連市場では国内最大手。シェア拡大に向けた方策は。
酒井 冷凍とろろの用途開発では、はんぺんや肉団子、がんもどきといった加工食品にも供給しています。生地に練り込むとふっくらなめらかに仕上がる効果があります。
ただ、食材供給だけでなく、今後は自社で冷凍食品やチルド食品のオリジナル商品の開発にも取り組んでみたい。
最近、業務用では長芋をダイス状にカットして昆布やオクラと混ぜた商品、長芋をオクラと野沢菜で和えた商品が売れています。根菜類の調達ルートは多数持っていますので、山芋、ごぼう、れんこん、にんじんなどを使った和え物系の冷凍惣菜の開発は進めやすい。販売チャネルも業務用に限らず、スーパーやドラッグストアなどコンシューマに近い業態を開拓したいと思います。
（さかい・ゆきお）1963年９月１日、新潟県見附市生まれ。大学卒業後、薬品商社で食品添加物や調味料の営業に従事。1998年ヤマトフーズ入社。取締役営業本部長を経て2016年常務取締役に就任、現在に至る。