表面処理大手が食品分野に参入
アルミ包材の誤検出を防ぐ金検開発

 表面処理・鋳造装置メーカー大手の新東工業(名古屋市、永井淳社長)はアルミ包材の影響が受けにくい金属検出機「Tecnoeye(テクノアイ)」を一昨年開発したが、HACCP対応を進める中小の食品工場を中心に提案を強化している。

 最大の特長は独自技術の「磁気バイアス型磁力線検出方式」。金属異物の磁性(磁気を帯びた状態)を増幅する磁化機能と検出機能を一体化した磁気バイアスセンサを世界で初めて開発した。本業の表面処理の非破壊評価技術を応用した。検出ヘッド内部に永久磁石で磁場をつくり、鉄やステンレスなどの異物(磁性金属)が通過した時の磁力線の変化を感知して瞬時に検出する。

 アルミは非磁性体のため磁力線に影響は与えない。それでも多少のノイズは発生する。そこで、アルミのノイズを閾値(しきいち)として最初から検査機に記憶させることで、アルミ包材と金属異物の磁力線の変化の差を読み取りやすくした。

 開発を主導した牧野良保チームリーダーは「閾値はアルミ包材の正常品を予め通すだけで自動設定できる。その後の検査で磁力線に反応があれば異物ありと判断する。この比較判定が検出方式のコアになる」と語る。

新方式の金属検出機「Tecnoeye」、検出ヘッド幅は140mm、従来の磁化式に比べて大幅な
省スペース化を実現した

 従来の「うず電流」を起こして磁界の乱れを感知する「サーチコイル方式」は導電性の高いアルミ包材をはじめ、しょう油やカレールウなど塩分濃度が高い食品、温度変化が大きい冷凍食品では感度が下がり、誤検出が多かった。新東工業は世界で初めて磁力線を使うことで、こうした課題解決を実現した。

 対応製品はレトルト食品やフリーズドライ、水産加工食品(海苔、鮭フレーク)、スナック菓子、みそ・しょう油、粉末スープ、冷凍食品など幅広い。最高感度(理論値)は鉄で球径0.7mm、ステンレスで球径1mmと高く、ブレードの欠けや摩耗した金属粉なども検出できる。

現場に導入しやすい省スペース設計

 アルミ包材の誤検出を減らす金属検出機としては検出ヘッドの手前で金属異物に着磁させる「磁化式」が知られるが、アルミのノイズを軽減するために着磁装置と検出装置の距離を300mm程度確保する必要があり、機械の大型化は避けられない。「中小の食品工場は設置スペースが限られているため、導入は進んでいない」(牧野氏)のが現状という。

 「Tecnoeye」は磁化機能と検出機能を一体化した磁気バイアスセンサが特徴で、距離の確保は必要ない。しかも検出ヘッド幅はわずか140mmと、従来の磁化式に比べて大幅な省スペース化を実現した。

 コンベヤのサイズは幅280mm×長さ800mm。床から搬送面までの高さは標準機種では700mm。既存の製造ラインに組み入れやすく、旧型の検査機とのリプレースも簡単に行える。本体重量は約75kgで、キャスタをオプション装備すれば女性や高齢従業員でも簡単に移動させることが可能。頻繁に起こる製造ラインの配置換えにも素早く対応できる。

「ピクトグラム」採用、誰でも使える高い操作性

 操作性の高さも大きな特長。カラータッチパネルはもちろんのこと、操作盤では珍しい「ピクトグラム」を採用した。ガイドに従って検査の基準となる正常品を数回通過させて登録すれば、あとは検査開始をタッチするだけ。「トリセツ」は不要。わずか2ステップで稼働できる。

 牧野氏は「製造現場にはパート従業員や派遣社員、外国人ら金属検出機を扱った経験がない人が大勢いる。

 これまでのサーチコイル方式は登録作業が複雑で、操作を覚えるのに時間がかかった。この機械は段取り替えが発生しても『製品を登録してよ』の一言で済むから、現場担当者だけでなく、操作を教える責任者からも好評を得ている」と語る。

 実績は確実に積み上がっている。ある佃煮メーカーは塩分濃度の高い商品を多く取り扱っているが、これまでと違って誤検出は一度も起きていない。歩留まりの改善や生産性の向上に貢献しているという。

検査開始前に正常品を数回通過させてアルミのノイズを記憶させれば、誤検出を抑えることが
できる

「グッドデザイン賞」受賞

 「Tecnoeye」は外観をシンプルでスタイリッシュなデザインに仕上げた。その理由について牧野氏は「金属検出機は食の安心や安全を守る重要な装置。誤作動することがないよう大切に扱ってほしいという思いから」と説明する。

 「Tecnoeye」の本体は新東工業が強みとする表面処理技術でピカピカに磨き上げており、昨年はグッドデザイン賞を受賞した。審査では新たな検査方式の採用で金属検出の精度を高めたことやコンパクト化によって無駄をそぎ落とし、清潔感のある外観にしたことが高く評価された。

 牧野氏は「デザイン性だけでなく、市場背景をしっかりアウトプットすることで獲得できた」と胸を張る。