サーモンの陸上養殖事業に参画

 三井物産は水産物の閉鎖循環式陸上養殖システムを開発したベンチャー企業FRDジャパンが実施する第三者割当増資を引き受ける。三井物産は9億円を出資し、FRDの株式の80%を取得する。

        完成イメージ

 FRDが開発した陸上養殖システムは、バクテリアを利用した高度ろ過技術で、天然海水や地下水を使用せず、人工海水を閉鎖循環させながら水質を維持する。これにより、従来の陸上養殖でコストが高い要因だった取水時の水温調節費用や、魚病の侵入リスクを大幅に減少でき、場所を選ばす内陸でも養殖できる。
 三井物産はFRDを通じ、日本国内にサーモントラウトの大規模陸上養殖場を建設する。フェーズ1で来年からパイロットプラントの操業を開始。2020年にはフェーズ2としてサーモントラウトを年間1500t生産する商業プラントに拡張する追加投資を行う。
 サーモン類は海水温が高いアジアでは夏季の海面養殖が難しく、養殖サーモンの大半がノルウェーやチリなど、寒冷地から輸入している。陸上養殖すれば水温をコントロールして、アジア地域でもサーモン養殖が通年できるようになり、消費地近郊にプラントを建設することで、高鮮度な商品を低い輸送コストで流通できる。
 世界的な人口増加や生活水準の向上を背景に、良質の動物性タンパク源である水産物の需要は年々増加している。再生産できる養殖水産物に対するニーズはますます高まっているが、海面での養殖適地は限られている。今後も伸長する水産物需要を支えるには陸上養殖の産業化が必要との判断から、三井物産はFRDへの出資参画を決めた。持続可能な水産物生産手段の確立と、おいしい魚が手軽に食べられる世界を実現するため、陸上養殖の産業化に取り組む。