複数拠点のデータを横ぐし分析、シーメンスと実証実験

記者会見に臨んだシーメンスの藤田研一社長兼CEOと
山本室長

 生産ラインの様々な機器から吸い上げた稼働データなどを活用してものづくりの最適化を図る試みが広がりつつある。今は部品加工などの製造業の段階だが、将来的には食品業界にも波及する可能が高い。オムロンは独シーメンスの日本法人と協業し、複数の製造現場のデータを活用した実証実験をこのほど開始した。

 オムロンのデータ活用システム「i-BELT」と、シーメンスが提供するクラウド型のIoTサービス「MindSphere」を連携させることで、複数拠点にまたがる大量の機器データを集め、分析して各現場に制御モデル(アルゴリズム)をフィードバックすることが可能になる。

 オムロンの山本真之インダストリアルオートメーションビジネスカンパニー企画室長は11月27日の発表会見で「複数拠点を横ぐしで分析し、あたかも1つの工場のように機器を最適に制御することができる」と語り、均一で安定したものづくりが実現できることを強調した。

 近年は需要の変動に対応するため急な生産地の変更や複数拠点で同時に生産ラインの立ち上げを行うケースが出ているが、拠点ごとに設備や生産条件が異なるため、生産性や品質を同じ水準で維持することが難しい。

 オムロンの「i-BELT」は収集したデータを熟練コンサルタントが分析して課題を可視化し、最適な制御アルゴリズムを設定して機器にフィードバックすることがポイント。今回の実証実験では、シーメンスの「MindSphere」を使ってオムロンの複数の工場から金型の加工データを集約し、大量のデータから必要データをどう効率的にクラウドにあげるかを検証する。また、熟練コンサルタントによる分析データ(静的データ)と、各工場から連続して上がってくるリアルタイムのデータ(動的データ)を融合して活用する実験も行う。

 井上宏之同企画室IoTプロジェクト本部長は「大量のデータを活用することで分析精度が上がるとともに、アルゴリズムの汎用性も高まる。さらに静的データと動的データをを組み合わせて制御技術を進化させたい」と語った。