ジェラートマシンで先陣切る

 数ある食品機器メーカーの中でも、六次産業化を進める生産者にいち早く働きかけているエフ・エム・アイ。主力のジェラートマシンや、アイスクリーム製造室の設計ノウハウで生産者の後押しに乗り出している。

 同社の生産者向けの提案で中心となる人物は東京本社第2営業部の加藤克美部長。加藤部長は札幌営業所の所長を長く務めた経験を活かし、営業活動を行なっている。「全国の中でも北海道は特に六次産業化の取り組みが進んでいる。小規模ではあるが、生産者向けに食品加工機器を紹介する展示会も数年前から開催されていた。情報交換も活発だった」という。この六次産業化の風は全国的に広がるに違いないと見込んでいた。
 同社も新たな販路を求めて産地に注目する。ジェラートマシンや、食材の下処理に使うロボクープなど設立当初からある加工技術をそのまま活用できる。ただ生産者との接点は外食産業に比べてまだ少なかった。

 農林水産省は六次産業化法に基づき、総合化事業計画と研究開発・成果利用計画の認定を行なっている。10月に公表した2012年度の第2回認定では、さつまいものジェラート(農事組合法人白鳥干しいも生産組合、茨城県鉾田市)、柿のシャーベット(有限会社山梨フルーツライン、山梨市)などアイスクリームで新たな事業に挑戦する生産者が多く含まれる。野菜ジュースなども含めると件数はさらに増える。

ジェラートやアイスクリームで新たな事業に挑戦する
生産者をサポート

 同社は10月に東京で開催された農業資材の専門展「アグリテック」に出展。会場内に「六次産業化のための加工販売資材ゾーン」という専門区画を設けていたため、同社にとっては生産者と直接触れ合う絶好の機会となった。
 ホテル・レストランショーなど外食向けの展示会出展なら豊富な実績はあるが、農業生産者向けの展示会は初めて。抹茶アイスや焼き芋アイスなど4種類のアイスを用意、ロボクープジューサーで加工したニンジンジュースの試飲を提供した。
 「出展して正解だった」と振り返る。「3日間で集まった名刺が200枚。おそらくブースを訪問した来場者はそれ以上いるだろう。1日30〜50名に足を止めてもらえれば“成果あり”と見込んでいたが、それをはるかに上回った」と手応えを感じている。
 アイスクリームマシンやジェラートマシンから始まった生産者への提案。ロボクープによる食材の下処理の提案を経て、現在ではペーストリーオーブン「ウノックス」など製菓機械にも幅が広がろうとしている。収穫した野菜や果物を使って産地で菓子を作る下支えしたい考えだ。

ロボクープで農産物の下処理も

全体見渡せる人材の誕生に期待

      加藤部長

 「一次産業者は農産物を作るのに長けているが、加工まではわからないことが多い。我々は加工技術やそのノウハウでサポートできるが、それだけでは六次産業化は育たない」と加藤部長は語る。
 「我々の機器だけで最終製品は完成しない。いろいろな加工機器を組み合わさなければならない。出来上がった製品をどのように販売するか、どのような物流を辿るかなど、その先にも考えることはたくさんある。各分野のプロ企業が連携を取り、一括してプロデュースできるプロを輩出することが急務だ。このような職種は北海道では少しずつ誕生しているが、全国レベルで増えるよう当社でも積極的に連携先を探していきたい」。
 生産、加工、流通、販売――。全体を見ることができる人、円滑に動かせる人が成熟することを期待し、同社では加工技術の側面からサポートできるよう働きかけている。

 フードエンジニアリングタイムス(FEN)2013年1月9日号掲載