ベトナムの水産食品業界が大きく変貌している。過去10年足らずの間に街中を走るタクシーが小奇麗になり、都市部の幹線道路にはバイク専用レーンが設けられた。またスーパーに並ぶ冷凍食品の品揃えが潤沢になり、生春巻の具材やフォーの新しいトッピング具材としてドクダミが加えられていたのが印象的。中国やタイの経済発展のスピードと比べ、ベトナムのそれは実にゆっくりとしたもの。現地市民に聞くと、「役人の汚職事件で景気は停滞したままだ」という声もある。
ホーチミン市内スーパーの冷凍食品売場
街中のスーパー、百貨店、生協、C&C(キャッシュ&キャリー)を訪ねると、冷凍食品売場の充実ぶりに驚く。冷凍食品が普及し始めているということは、ベトナムの主婦も多忙になり「自宅での調理が減っていることか」と現地女性に聞くと、「昔ほど調理しなくなったとは思いますが、冷凍食品を利用するのは一定以上の収入がある、比較的裕福な家庭ですよ」と説明された。
こうした内需の高まりを背景に、これまでのような輸出に頼り切りという意識は経営トップの頭から消え去りつつあるようだ。中国と同様に、自国内での販売に力を入れ始めている。ただし輸出からスタートした冷凍食品工場の多くは、必要以上にハイスペックな製造を余儀なくされた上で、厳しい価格競争に巻き込まれるため、内販で利益を出すのは難しいと言われる。その反面で、有力企業のトップは「内販専用工場を新設して量産したい」とも語る。