ポーランドの高性能機器を日本に紹介
ラディクス 代表取締役 稲坂裕実氏

 食肉機械や食品資材を輸入販売しているラディクスは大型食肉機械を販売する会社としては後発組に属するが、ポーランドのノヴィッキ社製の食肉加工機の取扱いを開始して以来、大きく飛躍してきた。導入を開始した当初はポーランドの事を知っている日本人がほとんどおらず、文化の紹介から始めたという。近年はノヴィッキ社製品の優秀さ、高品質、先進性、合理的な価格が多くのユーザーの目に留まり、実績を重ねている。

   稲坂代表取締役

 ――「食肉加工機械といえばドイツ」のイメージだが。
 稲坂 ポーランドに目を付けたのは約10年前。その頃はユーロが高く、ユーロ圏から機械を輸入しても日本のお客様にとっては高い買い物でした。そこでユーロ圏ではなく、工業レベルが高い国を探し始めました。ポーランドはドイツの下請けなどをやっていた関係で、技術レベルはかなり高く、人件費はドイツに比べると安かったので、ポーランドに絞って業者を探しました。
 ノヴィッキ社はオランダの友人の紹介で知りました。工場に行ってみたらヨーロッパでも一番立派と言えるくらいの工場でした。ヨーロッパの機械メーカーはスモークハウス、インジェクター、カッターなど、専門メーカーに分かれているので、大規模な工場は少ない。しかしノヴィッキ社は従業員200人くらいの大きな工場でほぼ全ての食肉加工機械を生産していました。これはいいぞという事で導入したのが最初でした。

 ――日本人にはあまりなじみがない国だ。
 稲坂 導入した当初は自動車産業がなく、一般人の目に触れる機会が少なかったせいか、ポーランドの事を知っている日本人は、私も含めほとんどいませんでした。「ポーランドで食肉機械作れるのか」、「共産主義の国ではないか」と思われ、信用がありませんでした。
 しかし、ポーランドの労働力や工業化の質は高く、隣国のウクライナなどと比べると突出している。近年では日本からヨーロッパに進出している日本企業のヨーロッパ向け工場は、ほとんどポーランドに工場を建設しています。国民性は日本人に近いかもしれない。3大親日国の1つでもあります。
 当社ではIFFAが開催されるときにヨーロッパ視察のツアーを組みます。ドイツで展示会を見た後、ポーランド、リトアニア、その他の東欧など視察をして理解を深めています。

 ――最近のイチオシ商品は?
 稲坂 ノヴィッキ社のMIM(ミートインシステム)があります。ハムはインジェクションで大豆たんぱくなどの植物たんぱくを大量に注入します。MIMは植物たんぱくの代わりに肉の端材を液化してインジェクションするシステムです。まだ導入が始まったばかり。と場を併設していて、端材が出やすい工場じゃないと導入が難しいので国内で稼働しているのはまだ少数です。
 植物たんぱくを使用するよりも味が良いハムが製造できますし、液化する端材は安い商品として販売する肉などを使用するので植物たんぱくが高騰した時には価格的なメリットもあります。

 ――水産業界向けは?
 稲坂 はい。ノヴィッキ社では最近は水産関係に力を入れています。ポーランドは内陸の国と思われがちですが国土の1/3位は海に面しており、かなり水産業が盛んです。スモークサーモンの生産量は世界で1、2位を争うと聞いています。
 スモークサーモンはハムと製造工程で共通した部分があることから、魚の肉質に合わせて針を細くし、本数を増やすなどした水産用のインジェクターを開発しました。1480本くらい針がある大量生産用の機械などを生産しています。
 日本向けの販売を進められているのですが、水産業界にはなかなか入り込めていないのが現状です。地道に販路を切り拓いていくつもりです。

 ――業界は長いのですか?
 稲坂 食肉機械や資材を40年位取り扱っています。昔は生肉用の小型機械を輸入販売していました。今は大型の食肉加工機械が主力。インジェクター、タンブラー、充てん機、スモークハウスなどハム、ソーセージ製造関連の機器は全て取り扱っています。大型機械の取引先は大手食品メーカー。中小や生肉を取り扱っている加工業者などに販売する小型の機器は代理店を経由して販売しています。

 ――今後の課題は?
 稲坂 一番の課題は製造のライン化です。昔は単体販売でしたが、今はどうやったら機械が連携しライン化できるか、人手がかかっていた部分をどうすれば自動化できるかが重要になっています。日本では長大なラインは組めないし、単一品を多量に製造するのは現実的ではありません。少量多品種に向いた、組み換えできるショートラインになるとみています。労働集約的な産業はどの分野も自動化が課題。食品製造業は原料で生ものを扱うので機械化が難しいこともあるが、総じていえば機械化が遅れた業界だと思います。それだけに人手難のこれからはビジネスチャンスが広がる局面を迎えると期待しています。