冷凍弁当で低価格戦略を打ち出す
成長市場ではシェア拡大を優先

    「まごころケア食」のメニューの一例

 高齢者向け配食サービスをFC展開するシルバーライフ(東京都新宿区、清水貴久社長)の冷凍弁当「まごころケア食」が好調な売れ行きを見せている。ネット直販への本格参入は2019年6月と間もないが、これまでに330万個以上を売り上げた。

 「まごころケア食」は健康バランスや糖質制限、塩分制限など5種類あり、主菜1品と副菜3品の献立は管理栄養士が監修する。定期購入コース7食セットで税・送料込み3980円とメーカー直販の強みを活かした割安な価格設定が受け、1カ月以内に再注文するリピート率は50%を超える。購入層は20〜60代と幅広いが、継続して注文するのは中高年以上の単身・二人世帯が多いという。

 実は工場に生産余力があれば、数字はさらに積み上がっていた。昨年は巣ごもり需要の拡大で注文量が想定を上回り、第1工場の生産能力がひっ迫したため、ネット広告の投入量を抑えざるを得なかった。

 今年は新たに第2工場(=栃木工場、栃木県足利市)が6月に本格稼働したことで、第1工場(=群馬工場、群馬県邑楽町)に生産余力が生まれた。第1工場(群馬工場)を7月に改修して冷凍弁当の生産ラインを増設する。生産限界ラインを2倍以上の日産5万食に引き上げる。

 清水社長は「これまでは頭を押さえつけられているようで口惜しかったが、製造限界ラインが上がったことで、やれることが増えた」と語り、攻めの姿勢に転じる考えを示す。

「置き配」開始、1食500円以下に

 ネット広告の「ブレーキ施策」を解除し、積極的に展開するほか、冷凍弁当の「置き配サービス」をこのほど開始した。FC加盟店のラストワンマイル配送網を活用したビジネスモデル。客からネットで注文を受けると、最寄りの加盟店が専用の保冷箱と保冷剤を使い、土曜日の深夜から日曜日の早朝にかけて指定場所まで配達する。配達完了時には画像付きメールで通知する。

 定期購入コース7食セットで通常3980円のところ、税・送料込み3480円で提供する。1食あたり500円を下回る価格設定とした。ポイントは送料の差額。

6月に本格稼働した第2工場(栃木工場)、これによって第1工場(群馬工場)の製造限界
ラインが上がった

配達員としてサラリーマンの募集も

 ネット直販による冷凍弁当の宅配送料は1世帯あたり約1400円となり、7食セットでは1食あたり200円前後になる。一方、加盟店には50食単位で送るため、1食あたり40円前後にまで抑えられる。同社によれば加盟店に「置き配」の手数料800円を支払っても利益は出るという。加盟店は全国に約900店舗あるが、当初は約200店舗でスタートし、順次拡大する。

 さらに、サラリーマンの副業として秋以降に募集をかける計画もある。「週1回、1日10件回れば8000円。週4回で3万2000円のお小遣いが稼げる」(清水社長)。

 7食セットの業界標準は税・送料込みで5000円前後が多く、それより1500円近く安い価格設定は他社にとって大きな脅威になる。今回の「置き配」サービスはビジネスモデル特許として出願しており、他社の参入に予防線も張った。

 清水社長は「冷凍弁当市場は今後5年間で2倍の500億円規模に拡大すると言われている。成長市場では価格を下げてでもシェアを獲っていくことが重要で、市場をか占化した後で大きな利益を生み出せばいい。我々は利益よりもシェア獲得を優先する」と語り、価格競争を積極的に仕掛ける考え。