フロン漏洩に危機感増す、確実な回収が急務

 フロンを使った冷凍空調機器は食品の流通や衛生環境に多数利用されている。業務用冷凍冷蔵庫、冷凍冷蔵ショーケース、低温輸送車など活躍の場は限りない。しかし、フロンはオゾン層を破壊し、地球温暖化係数がCO2の数百倍〜1万倍といわれ、その扱いが問題視されている。  
 回収量も07年に改正フロン回収・破壊法が施行されたにも関わらず伸び悩んでいる。しかも09年3月、経済産業省は従来想定していたものよりかなり多量の使用時漏洩量があったと公表した。
 冷凍空調機器からのフロン回収技術と回収フロンの再生・再利用を推進している冷媒回収推進・技術センターは「フロンの流れを厳密に管理することが急務。フロンは匂いも毒性もほとんど無いため、数年後・数十年後に気が付いてみると、取り返しのつかない状態になる」と懸念している。フロンを確実に回収し、大気に逃がさない、漏らさない、機器にできるだけ残さずに回収する姿勢を崩さないことが環境保全への大きな一歩になるという。

機器に残ったままのフロンが問題

 フロンの回収率が伸び悩んでいるものの、「日本の回収率は世界に比べても高い」と同センターの河西詞朗センター長は説明する。しかし、「現在の回収率は30数%。国が求めているのは60%」とギャップの大きさに厳しい表情を見せる。

    河西センター長

 同センターではフロン回収技術者の育成と資格認定制度、フロン回収の重要性の啓蒙活動に総力を挙げて取り組んでいるが、「フロン回収業者はもちろん、機器の所有者・使用者にも周知を深めたい。フロン回収は所有者・使用者に責務がある」と語る。
 フロン漏洩の実態を調べていくと、回収作業を行なったものの、回収しきれないままに廃棄処理した機器に残っているケースが多々あるという。技術者の育成が急務だとともに、「ユーザーの当事者意識が欠かせない。ほとんどないことだが、未処理の冷媒を廃棄するユーザーもいると聞く。モラル以前の問題」と危惧している。

冷凍空気調和機器施工技能士の実技試験の様子